日酒販2021年3月期決算、コロナ禍で減収減益 今後の酒類消費の回復に向けた施策は?

千田直哉
Pocket

量から質への転換、付加価値の提案が課題

––村上浩二営業本部長(同)

 今期の主な営業施策は新たな需要への対応ということで、ひとつにはきめ細かな業態別対応の推進、もうひとつは付加価値商品の提案力強化していきたい。もともと日酒販の業態戦略は、取引拡大に合わせて「業務用」「二次卸」「CVS(コンビニエンスストア)」「スーパー」「DS」「ドラッグストア」「ホームセンター」「ネット通販(EC)」など、各業態の専門部署をそれぞれ設置し、業態に即した対応をできるようにしてきた。また、そこでのノウハウを蓄積できる体制となっている。コロナ禍での新しい需要の奪取にむけてそれぞれ、きめ細かな業態別対応をいっそう推進していく。

 なかでもコロナ禍によって購買形態が大きく変化しているが、宅配通販需要の高まりなどECへの注目度が上がる結果となっている。日酒販は以前からEC市場を取り込んできたが、ECに必要な卸機能は日進月歩でグレードアップが求められている。その変化のスピードについていけるように、今期も人員の増強、品揃えや提案力の強化。物流機能の見直しといった課題に取り組みたい。

 また、発足から2年が経過した流通統括本部ではあるが、各地区に配置した流通統括所属の営業マンが各エリアのニーズに対応した個別の提案において成果をあげつつある。流通統括本部指導の下、部署または量販チェーンをまたぐ横断的施策や企画を実施しているからだ。そして今期の得意先編成の見直しにより、流通第7本部を新設、得意先の需要やニーズに柔軟に対応できる環境になった。外食需要の蒸発という苦境にある「業務用」においては、当社の強みである商品調達力や供給力、物流機能を積極的に活用してもらう提案をすることで回復の後押しをしたい。このようなきめ細かい業態別対応を推進する部門として営業企画部内にマーケティング課を新設した。市場動向に注視しながら、お客への提案充実を図っていきたい。

 いま、市場には逆風が吹いている。酒類流通における大事な課題は、量から質への転換、付加価値提案だと考えている。昨今、低アルコール化や脱アルコール化などの傾向が進み、麦酒の糖質オフのような健康志向商品の拡大が続いている。また社会の課題という意味では、「業務用」シェアの高かった地酒、本格焼酎、日本産ワインといった生産者はコロナ禍のダメージが深刻だ。このような国内メーカーの商品に卸として市場への橋渡しをおこない、消費を応援することが当社の役割だと考えている。

 付加価値商品提案強化については、この度営業本部内に商品開発部を設置した。ソリューション営業の実践のため、オリジナル商品や企業留め型商品の開発、アソート企画、オリジナルギフトの開発推進を行っていく。卸ならではの目利き力で価値をプラスして、お酒を楽しんでもらうための提案に磨きをかけること。酒のプロフェッショナルとして、このような変革に対応したいと考えている。簡単にいえば、日酒販は酒のコーディネーターというところに活路を見出すべく活動していきたい。

 商品施策については、酒類の消費志向が多様化するなかにあって「和酒」は低迷傾向にあるが、我々卸にとって利益の柱である本格焼酎や地酒を含む「清酒」の拡売は継続して注力していく。「清酒」については、地酒メーカー12社と倶楽部「蔵」を設立してから14年目を迎えた。そのクラブ「蔵」の“四季の酒企画”では年間販売数量10万本を目指しており、いまのところ順調に推移している。また本格焼酎においては、20代30代の若年層に親しみをもって購入、飲酒体験をしてもらえるようにメーカーと連携し、すそ野を広げる活動をしていきたい。

田苑金ラベルハイボールは好調。焼酎乙類のRTDにこだわる

 商品開発については、昨年の「田苑金ラベルハイボール」に続き、今年の5月には販売チャネル限定ではあるが本格焼酎ハイボールを3種類の販売を開始した。当社の企画発売する焼酎ハイボールは焼酎と炭酸水のみの使用で、焼酎乙類企画にこだわっている。糖類や酸味料を加えたリキュールやスピリッツではなく、あくまでも乙類企画で出していきたい。本格焼酎を気軽に楽しむというコンセプト、さらにはプリン体や糖質、香料がゼロという健康志向のニーズにも対応した商品にこだわりたい。今後も酒卸ならではの企画と新たなニーズに対応できる商品の開発に努めたい。

 そして、もうひとつの収益の大きな柱であるのが当社のエージェント洋酒だ。今期からスペインのカバ「Codorniu」(コドルニュー)、台湾のシングルモルト「カバランバー」の新規RTDの発売を6月、7月から開始した。家庭用、業務用ともに提案できるラインアップをさらに充実させていきたい。

 

【商品別売上(単体)】

  • 清酒:251億1800万円 対前期比9.6%減
  • 焼酎甲類:168億2200万円 同12.5%減
  • 焼酎乙類:845億5100万円 同4.9%減
  • 和酒その他:23億2800万円 同6.7%減
  • 和酒計:1288億2100万円 同6.9%減

 

  • 国産洋酒:957億500万円 同5.2%増
  • 輸入洋酒:370億1000万円  同11.9%減
  • 洋酒(ビール系除く)計:1327億1500万円 同0.2%減

 

  • 麦酒:722億3600万円 同21.6%減
  • 発泡酒:181億4000万円 同13.6%増
  • 新ジャンル:543億5600万円 同8.1%増
  • ビール系計:1447億3300万円 同8.6%減

 

  • 酒類計:4062億7000万円 同8.6%減
  • 食品: 743億4600万円  同7.1%減
  • その他:145億5900万円  同26.7%減

合計:4951億7600万円(同6.5%減)

【チャネル別売上(単体)】

  • 一般店:54億6600万円 対前期比30.7%減
  • 業務用:499億9700万円 同39.3%減
  • 二次卸:891億2300万円 同11.7%減
  • CVS(コンビニエンスストア):578億7500万円 同3.7%減
  • スーパー:1324億1300万円  同10.9%増
  • DS(ディスカウントストア):559億2800万円  同8.0%増
  • ホームセンター:179億3800万円  同3.8%増
  • ドラッグストア:410億6800万円  同5.9%増
  • その他(チェーン企業): 44億2600万円  同5.6%減
  • ネット通販:256億2700万円  同15.1%増
  • その他:153億800万円 同36.3%減

合計:4951億176億円(同6.5%減)

1 2 3

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態