生き残るために「ハイブリッド型チェーンストア」を志向=バローHD 田代 正美 会長兼社長

聞き手:下田健司
構成:田中 浩介
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カテゴリーキラー的SMを開発する

── 今後は、客層を拡大することで売上を伸ばしていくことになりますか?

田代 少子高齢化と人口減少によって足元のマーケットが縮小するなか、特定の客層をターゲットにした品揃えでは先細りしていくだけです。人口が増加し、マーケットも拡大していたころは、繁盛店ができるとその近くに瓜二つの店舗を出せば、売上を2分することができました。でも今はそれができません。ローカルマーケットでは、これまでとは異なるチェーンストアの展開が求められていると実感しています。

 先日も米国を視察したのですが、ふだんの生活に商品が揃うウォルマート(Wal-Mart)の大型店よりも、トレーダー・ジョーズ(Trader Joe’s)のようなリーズナブルな価格で、品質のよい商品を提供するコンパクトな店舗のほうが格段便利ですし、購買意欲をそそられます。

──これまでと異なるチェーンストアの具体像を持っていますか?

16年5月に業態転換した「タチヤ山県店」(岐阜県山県市)カテゴリーキラー的なSMと位置づけるタチヤ。バローからタチヤへの業態転換も進めている。写真は16年5月に業態転換した「タチヤ山県店」(岐阜県山県市)

田代 われわれは主力業態であるバローの高速出店とカテゴリーキラー的なSMの開発でエリアのシェアを高めていくような「ハイブリッド型チェーンストア」を志向しています。地域の食品売上のシェアを高めるには新しい市場を創造したり、新たな客層を開拓するような工夫が必要です。その具体像として、生鮮食品を中心にしたカテゴリーキラー的なSMを考えています。

 当グループならSM企業のタチヤ(愛知県/森克幸社長)がそれに当たります。タチヤは生鮮食品が売上高構成比の8割を占める、生鮮食品のカテゴリーキラー的なSMです。バローよりも商圏が広く、客単価も高い。各店舗で独立採算制を敷いており、青果と鮮魚は担当者が毎朝直接市場で商品を買い付け、低価格で販売する独自の手法を採用しています。ほかのSMにはない高鮮度の生鮮食品をその日のうちに売り切るため、収益性が非常に高いことが特徴です。

 実はバローのドミナントエリアで、バローのいくつかの既存店舗をタチヤに業態転換しました。そして業態転換した店舗は売上、利益ともに大幅伸長しています。ただ、タチヤの場合は、人材の確保・育成に時間がかかるため、年間2店舗の出店が精いっぱいです。それでもタチヤのようなカテゴリーキラー的なSMの開発には今後も力を入れていきたい。

──もうひとつ。SMではEDLP(エブリデイ・ロー・プライス)の実験店舗を展開していますが、モデルは見えてきましたか。

田代 09年4月にオープンした「バロー師勝店」(愛知県北名古屋市)を1号店として、これまでEDLP志向の店舗を7店展開しています。これら7店舗ではチラシを撒いていません。そのため集客するには安さに加えて、再三来店したくなるような工夫が求められます。そこで店長に売場づくりについての権限を委譲して、売場を常に変化させるように努めています。その結果、売上は好調に推移しています。

 EDLP志向の店舗では、とくに生鮮食品の売上が好調です。タチヤの品揃えや売場づくりのノウハウを一部取り入れており、人材の育成にも力を入れています。タチヤ同様に社員の育成に時間がかかるため、EDLP志向の店舗も一挙には、なかなか増やせません。しかし、EDLP志向の店舗もできるだけ早く多店舗化させたいと考えています。

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