社員が成長を実感できる組織へ人材教育に本腰入れる=東急ストア 須田 清 社長

聞き手:下田健司
構成:リテイルライター:太田美和子
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15年度から新規出店 3~5年かけ全店大改装

──15年度の商品面での重点施策は何ですか。

須田 MD(商品政策)においては、ここ2、3年取り組んでいることがあります。当社には駅前立地の売場面積が小さい店舗が数多くあります。面積が少ないぶん、取扱商品数を増やすことはなかなかできません。そこで、これだけはどこにも負けないという、業界一、あるいは日本一のカテゴリーを各部門でつくろうと考えています。

東急ストア

 1つめは、特定のカテゴリーについて、商圏のお客さまに合うように品揃えに特徴を持たせることです。そうすることで、商品を購入しようとされるときに東急ストアの売場を思い浮かべてもらえるようなカテゴリーに育てていきたいと考えています。たとえば、果物ならカットフルーツでナンバーワンをめざす、アイスならばプレミアムカップアイスでナンバーワンになるということです。

 2つめは、シニアマーケットにどう対応するかです。シニアマーケットへの対応方法は1つではありません。シニアマーケットは小さなマーケットの集合体です。これにいかに対応していけるかが課題です。シニアが総菜を買うようになってきたと盛んに言われますが、すべてのシニアが総菜を買うわけではありません。単身シニアが総菜を多く購入されますが、家族のあるシニアはそれほどではありません。

 世帯構成だけでなく、所得や健康状態によっても、シニアの求めるものは違います。シニア全体に共通する需要と、細分化した需要を理解したうえで、シニア対応を進めなければなりません。シニアのお客さまの情報を得ながら、仮説を立てて検証していくことが必要だと考えています。

 3つめは、プライベートブランド(PB)です。PBは当社のMDにとって、非常に重要な部分です。店舗を展開する東急線沿線は、日本で最も肥沃な消費マーケットの1つです。価格訴求型のPBはもちろん必要ですが、このマーケットにおいては、それだけでは当社を選んでいただけません。上質なPBによって、通常のナショナルブランド(NB)では提供できない価値を提供していく必要があります。

 原材料の品質はもちろん、お客さまの使い勝手も考えて商品化するのが、当社のPB開発の考え方です。お客さまが知らず知らずに感じている不満を理解し、出店エリアのお客さまに寄り添った商品開発をしていこうと考えています。

 現在、PB「Tokyu Store PLUS」は約500アイテムあります。開発した商品がすべて売れるわけではありません。リニューアルしたり、場合によっては販売を中止したりと、お客さまのニーズの変化に対応して商品改廃をすることが非常に重要です。PBも東急ストアファンを増やす要素になると考えています。

 もう1つ付け加えるならば、生鮮食品の強化があります。総菜の強化はもちろん重要ですが、SMの使命は家庭での調理の手助けとなる食材を提供することです。「生鮮食品の強化」を会社の政策に掲げてからは、それまでダウントレンドにあった鮮魚部門の売上は現在、前年比2ケタ増で伸びています。

──不採算店舗の閉鎖を終え、今後の新規出店についてはどのように考えていますか。

須田 過去2年間、出店をほぼ凍結してきましたが、15年度からは新規出店をしていきたいと考えています。14年度には店舗開発スタッフを増強し、1年間かけて出店できる体制をつくり上げました。

 昨年4月にオープンした「東急ストアフードステーション中延店」が、非常に好調です。売場面積が57坪とコンパクトなこの店では、コンビニエンスストア(CVS)の需要を取り込もうと、カウンターコーヒー、デジカメプリント、ファックス、収納代行サービスを取り入れました。これらの各種サービスを提供しながら、生鮮食品で勝負するというこの店のコンセプトです。売場面積はCVSとほぼ同じ規模ですが、平均的なCVSの2倍の売上に達しています。

 この店をモデルとして、これをさらに進化させた小型店を開発します。さらに売場面積200坪から300坪のSMをつくっていきたいと考えています。

 現在、その候補地の選定に入っているところで、15年度は1、2店舗出店したいと考えています。また、既存店強化のため、今後3年から5年かけて全店を大規模改装していく考えです。改装後の店年齢を3歳台にすることをめざし、優先順位の高い店舗から改装を実施し、既存店のさらなる活性化を図ります。15年度は20店舗強を改装する予定です。

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