貿易、食品工場、物流センター…こだわり実現する仕組みで差別化=成城石井 原 昭彦 社長

聞き手:下田健司
構成:大木戸 歩
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成城石井浜田山店
「成城石井浜田山店」(東京都杉並区)。生鮮食品をフルラインで揃えている

 自社輸入商品のほかに、メーカーに委託して当社のスペックで商品を製造してもらうOEM(Original Equipment Manufacturer)のオリジナル商品、セントラルキッチンで製造する自家製商品があり、こうしたオリジナル商品の総アイテム数は2000以上になります。

 セントラルキッチンでは、和洋中等の総菜、デザート、パン、ハム・ソーセージなどを自社で調理人を抱えてつくっています。

 店舗で取り扱う総アイテム数は40坪程度の小型店で4000アイテム弱、100~200坪の店舗で8000~1万2000アイテムほどですが、オリジナル商品の売上高構成比は3割強となっています。

──貿易会社を自社で持つメリットは、どこにあるのでしょうか。

 当社が強みとする“尖った商品”は、大量に仕入れて大量に売るというよりは、少量でも大切に持ってきて売るカテゴリーです。そうなると規模のメリットが出ないため、商社や卸売業は扱いません。本当においしいものを、現地の味を再現できるかたちでお客さまに提供するためには、自社で貿易会社をつくり、物流を組み立てる必要があるのです。

 以前はヨーロッパを中心に商品を調達していましたが、ここ数年はアメリカ、カナダの北米、南米、オセアニア、一部アジア、南アフリカ、ヨーロッパと、かなりグローバルになっています。為替の影響もありますので、ヨーロッパに頼るとユーロ高になった際にリスクを伴います。また経済成長の著しいアジア諸国がヨーロッパでの商品調達を増やしていますので、買い負けることもある。そうしたなかで、現在は調達する市場を広げています。

──ふたつめの特徴として挙げられたセントラルキッチンは、どのような特徴がありますか。

 当社のセントラルキッチンは、できる限り安全・安心な商品をお客さまに提供しようと合成着色料、合成保存料、合成甘味料を使わずに商品をつくっています。これ以外にもさまざまな調味料がありますが、なるべく自然な味に近づけたいと考えています。それができるのは、自社で仕組みをつくり、自社工場を持っているからです。

 セントラルキッチンをつくったのは1996年、当時の石井良明社長の時代です。「成城石井アトレ恵比寿店」(東京都渋谷区)のオープン前年。今でいう「駅ナカ」ビジネスを始めるタイミングで、総菜の需要が広がると考えてつくりました。

 駅や都心で差別化を図るためには、総菜やワイン、コーヒー、紅茶といった嗜好性の高い商品の品揃えを充実させることが重要です。そうしたニーズに対応できる仕組みをつくり続けることが、商品力につながると考えています。

──12年4月に神奈川県高座郡寒川町の新物流センターを稼働させ、ワインの品質管理を強化しました。このセンターはどのような特徴があるのでしょうか。

 新物流センターを稼働させることで、従来は複数あった物流倉庫を集約化し、効率化を図りました。物流センターの運営自体は取引先に委託していますが、商品の調達から在庫管理などのオペレーション、配送のスケジュールまで自社で管理しています。

成城石井ワイン売場
同社の特徴であるワイン売場。温度管理を徹底したこだわりのワインが揃う

 この新センターの特徴はドライ、チルド、冷凍、定温定湿の4温度帯に対応していることです。とくに定温定湿の倉庫はワインを保管するための施設で、24時間コンピュータで管理し、倉庫内の温度と湿度を一定に保っています。倉庫内の温度を15度前後、湿度を60~70%に保つことで、直輸入ワインなどの商品をより高い品質を保って保管できるようになりました。

 ワインは、輸入した商品がすぐに店頭に並ぶわけではありません。飲み頃になったタイミングで店頭に並べるため、いったんストックすることになります。ただ、日本の夏の温度、湿度にワインをさらすと、現地で飲むのとは味が変わってしまいますから、適温に保ってワインをストックできる環境が必要なのです。

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