ホームセンター業界最大手!DCMは社長交代でどう変わるのか?

高浦佑介 (ダイヤモンド・ホームセンター編集長)
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基礎づくりから商品開発強化へ

 このタイミングでの新体制への移行は何を意味するのだろうか。

 いちよし経済研究所の小売セクターのアナリスト、柳平孝氏は「単なる若返りではなく、DCMの戦略シフトを意味するのではないか」と分析する。

DCMがとってきた事業戦略は一貫している。まずは久田宗弘社長のもと、基礎づくりに専念してきた。物流、IT、ポイント、アプリなどのプラットフォームをつくると同時に、ケーヨーを含めた850ある店舗数を生かしたPB開発を進めてきた」(柳平氏)。

 そして、今回の石黒新社長への交代は基盤形成がひと通り完成し、次のステップに移行したと柳平氏は見る。「商品開発を担当してきた石黒氏が社長に就くということは、今後より強力にPB開発を推進していく体制になるのではないか」(柳平氏)と推測する。

 クレディ・スイス証券の風早隆弘氏は、「DCMは同規模どうしの統合。上下関係のない統合での企業文化の融合は、通常簡単にできるものではない。久田社長だけでなく、各事業会社のオーナーが将来に対する理解があったから、10年以上かけて1つの区切りをつけることができた。事業会社の統合はいよいよ最終段階に移行した」とみる。

 一方で、留意すべき点もあると柳平氏は警鐘を鳴らす。「広域をカバーする小売企業は地域対応が弱くなることがある。総合スーパー業態ではこれまで100%、統合により地域対応力が弱まり、営業力が低下した。DCMはそうならないように、事業統合で商品部が各地域の担当者の声をしっかり吸い上げる必要がある」と柳平氏は指摘する。

 また、これまで郊外を得意としてきたDCMグループの各社と、人口密集地を商圏とするケーヨーの違いも指摘する。「ケーヨーの強みを残しながらDCM化をしていくことが、ケーヨー復活のカギになる」(柳平氏)。

 HC業界を取り巻く環境は依然厳しく、業界再編は今後も加速するはずだ。そのなかで、業界最大手DCMの事業会社統合がうまくいくかどうかが、今後の再編の流れを変えるだろう。

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記事執筆者

高浦佑介 / ダイヤモンド・ホームセンター編集長

2010年東京大学文学部卒業、12年同大学院修士課程(社会心理学)修了。14年ダイヤモンド・リテイルメディア入社。『ダイヤモンド・チェーンストア』誌の編集・記者を経て、19年4月より現職。

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