10カ月で6店舗出店! 浅草ドミナント急拡大中の「神戸牛ダイア」、急成長の秘密

千葉 哲幸 (フードサービスジャーナリスト)
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「浅草」に商機を感じた理由

 赤木氏が「浅草」という立地を知ったのは、かつての従業員が浅草にカフェを開業して、その手伝いをしたことがきっかけだ。浅草はインバウンドが多く、大きな商機を感じ取ったという。浅草で焼肉店を営む経営者と親しくなり、従業員を引き継ぐことになったのも背中を押した。

 「神戸牛の商売をしよう」と決意した赤木氏は、浅草で物件を探し、やがて元ブティックの建物を見つける。大家に自らの素性を説明して不動産業者に出向き、わずか1週間後に「浅草1号店」をオープンする。

神戸牛の入賞牛を一頭買いで仕入れて自社工場で加工し、鉄板焼き店からラーメン店までの各業態に供給している

 一般的に、物件の所有者は「煙や脂、臭いが出るのではないか」と“肉業態”の飲食店を警戒するという。そうした懸念を解消するため、吉祥吉グループでは2022年8月、神戸に100坪規模のセントラルキッチンをつくり、ここで真空パックにした肉を各店舗に配送している。店舗では、脂身を取った肉を、タレではなく塩・コショウで焼くため煙や脂はほとんど出ない。さらに浅草1号店が「坪月商120万円を超える」という繁盛ぶりを伝えると、だいたいの物件所有者は納得して貸しに出すという。

 人材については、コロナ禍にあっても事業を継続していた飲食業者に直接出向き、入社を働きかけた。「コロナ禍でも仕事を続けていた人たちは、飲食業が心底好きで、成長意欲を持っているからだ」という。こうした取り組みにより、2023年9月末までに80人体制を築いている。

鉄板焼き店では調理人が肉の表面をさっと焼いて、お客が好みの焼き加減で食べる

 浅草にドミナント出店するメリットについて、赤木氏は「視覚効果」を挙げる。インバウンドはウォークインで来店するパターンがほとんどで、「神戸牛ダイア」の看板がたくさんあることに安心感を抱いて入店するようだ。現状はお客の9割がインバウンドだという。従業員も約4割が外国籍で、流暢な英語で接客している。

 「神戸牛ダイアは浅草で20店舗はいけるのではないか」と、赤木氏は今後も浅草での出店を継続する方針だ。さらには、そば店やもんじゃ焼き店などにも「神戸牛」をメニュー化してもらうことを働きかけたいとしている。

 「これから全国の観光地で『神戸牛ダイア』を展開していきたい」と語る赤木氏。現地をよく知る事業者とパートナーシップを結ぶ、フランチャイズを超えた関係性により、ビジネスを広げていきたいという。赤木氏が「神戸牛」から感じとった「無限の可能性」はインバウンドがにぎわうことでさらに広がっていくことであろう。

神戸牛を使用した肉寿司も有力商品の1つで(画像はイメージ)、赤身550円、中トロ880円、大トロ1430円、極上ロース1980円(すべて税込)
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記事執筆者

千葉 哲幸 / フードサービスジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』編集長、商業界『飲食店経営』編集長を歴任するなど、フードサービス業界記者歴ほぼ40年。業界の歴史を語り、最新の動向を探求する。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年発行)。

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