広島の超人気直売所に学ぶ、生産者・店舗・お客「三方よし」のビジネスモデル

Pocket

地元の新鮮な食材や加工品が並ぶ農産物直売所。観光のついで、あるいはそれ自体を目的に訪れたことのある人は少なくないだろう。食品スーパーなど一部の小売店は競合する存在にもなっているが、そもそも直売所の強さとはどこにあるのか。そしてそこから学べることとは何か。広島県内にある全国有数の“繁盛店”をケーススタディとして、考察してみた

農産物直売所の数は全国で約2万4000カ所

広島市安佐南区にある「とれたて元気市広島店」
広島市安佐南区にある「とれたて元気市広島店」

 農産物直売所は、地元農家や農業協同組合などが設置した販売施設を指す。生産者は事前に「出荷者」として登録し、原則として自ら商品を持ち込み、値付、陳列を行う。現在、全国に農産物直売所は約2万4000カ所あり、売上規模は約1兆円。そのうちJA(農業協同組合)グループが運営する直売所は約2200カ所と1割弱だが、売上規模は3割弱にあたる3600億円を占める。

 そんなJAグループが運営する直売所の中でも、すさまじい集客力を誇ることで知られる店がある。広島市中心部からクルマでおよそ20分、広島市安佐南区にある「とれたて元気市広島店」(以下、広島店)だ。

 同店を運営するのはJA全農広島県本部(安藤重孝県本部長:以下、JA全農ひろしま)。周辺には食品スーパー(SM)をはじめ競合する小売店も少なくないが、21年連続で売上、客数を伸ばし続けているというから驚きだ。ちなみにJA全農ひろしまは広島店のほかに「となりの農家店」を東広島市で営業しており、こちらも繁盛店となっているが、本稿では広島店をメーンにレポートする。

「広島県産のみ」を取り扱い、年商は13億円超

広島店は2021年にリニューアルオープンした
広島店は2021年にリニューアルオープン。曜日や天候を問わず日々多くのお客でにぎわう

 広島店はJAによる“地産地消実践の場”として2001年10月に開業。その後21年10月に大規模改装を経てリニューアルオープンした。売場面積は840㎡、200台の駐車場を備える大型直売所だ。

 22年度の年商は13億2000万円、売上高構成比は大まかに、青果物(野菜、果物、花き)で約50%、精肉、鮮魚で約20%、その他約30%となっている。単価の低い青果が圧倒的であるにもかかわらず、平均客単価はおよそ2200円に上り、1回の購入点数が多いことがうかがえる。

 さらに驚かされるのが、野菜、果物(イベント時除く)、米、卵、牛肉、豚肉については、1年中「広島県産のみ」を取り扱っていることだ。とくに野菜については市場仕入れゼロで、100%出荷者の持ち込みで売場を形成している。その土地での収穫量が限定的であったり、そもそも産地でない場合などは、地域外から商品を供給して品揃えをカバーする直売所も少なくない。しかし「とれたて元気市」では広島県産にとことんこだわっているのだ。

1 2 3

記事執筆者

海蔵寺りかこ / KTMプラニングR 代表

食品コンサルタント
1級色彩コーディネーター、カラーデザイナー、UCアドバイザー

株式会社KTMプラニングR代表。大阪府吹田市出身、太陽の塔を眺めながらバレーボールに明け暮れる少女時代を過ごす。ダイヤモンド・チェーンストア誌連載「販促の強化書」、店舗調査解説などを執筆。JA全農にてさまざまな国産農畜産物のSPA化と向き合う。惣菜メーカー、食品スーパー、データ分析等の各企業のサポートや各種セミナーも開催している。

KTMプラニングRホームページ

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態