「エブリデイ・セイム・アホーダブル・プライス」を実現=マックスバリュ東海 寺嶋 晋 社長

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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──売上高販売管理費率や労働分配率などの経営指標を、どの程度改善させたいと考えていますか?

寺嶋 指標としては労働分配率ではなく、人時売上高(=売上高÷総労働時間数)に設定しています。ただやみくもに労働分配率だけを下げようとすれば、従業員がお客さまのために動かなくなってしまうからです。

 業界には1万8000円を超えている企業もありますが、当社の目標とする人時売上高は1万5000円で、現在ようやく1万4000円に手が届く段階です。あと1年ぐらいで約1割、人時売上高を上げたいと思っています。

──これまでマックスバリュ東海は、エブリデイ・ロー・プライス(EDLP)とエブリデイ・ロー・コスト(EDLC)の態勢づくりに取り組んできました。一方で寺嶋社長は、「EDLPは万能薬ではない」という趣旨の発言をしています。

寺嶋 EDLCについて言えば、まったくそのとおりです。ローコスト運営や低い商品原価で調達する仕組みづくりは、必ず実現しなければなりません。

 ただし、ローコスト態勢が整ったからといって、すべてをロープライスで売る必要はないと考えています。お客さま、メーカーさん・生産者さん、当社、がそれぞれ利益を享受できる「3方良し」のポリシーに則った、商品価値に対する正しい価格づくりに取り組むべきです。EDLPありきの価格政策では、そのことが歪められてしまう恐れがあります。

 ある程度の利幅をお客さまから頂戴して、その分を一次産業の生産者の方々に還元しないと、われわれも継続的な商売ができなくなります。最終的には、お客さまにもご迷惑をおかけしてしまうわけです。継続性を考えたら、EDLPではなく、毎日が同じで安心して手軽に買える価格、エブリデイ・セイム・アホーダブル・プライス、EDSAPであるべきだと考えます。

──すべての商品が安いわけではないが、生活必需品を毎日同じ価格で消費者に提供する。

寺嶋 ええ。SMの商売は今後、ますます小商圏高占拠型になります。そうなると、限られたお客さまに毎日来ていただけるかが重要なテーマになります。ところが、われわれが実践しているのは、EDLPと言いながらも、結局はチラシ販促に頼ったハイ&ロー戦略です。それを続けているうちは、週1回の特売日に大量に買うという購買行動はなくなりません。また、ロープライスについても、メーカーさんを無視した、ムダな安売りは必要ない。お客さまにストレスをかけない“買い場”の実現が必要というのが私の考え方です。

 要するに、誰に対してのロープライスなのかということ。競争店に対するロープライスではなく、お客さまにとってのロープライスであり、メーカーさんや生産者さんにとって納得できるロープライスでなければいけません。単なる価格競争としてのロープライスは継続できません。EDLPではなく、EDSAP。これが、いつお客さまが来店されても安心して買物ができるSMのあり方だと、私は思います。

 ただEDLCについては、これまで以上に努力しないといけません。商品を買い叩くのではなく、仕組みにより合理的なローコスト、そしてお客さまとメーカーさんが納得できるローコストを実現していきたい。そして、V(価値)=Q(品質)÷P(価格)、価値を上げていくために、価格の低減だけでなく、品質を向上させる商品力、開発力をつけていきたいと考えています。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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