物流はいまだ食品小売の「暗黒大陸」 経営戦略に組み込み変革する方法とは

雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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強固な物流インフラは、プロフィットセンターになる

 ただ、“経営戦略そのもの”とはいえ、物流を変革するためには少なくない投資が必要だ。コロナ禍で業績好調とはいえ、もともと収益率の低いビジネスである食品小売にとっては、体力を要する取り組みとなる。

 しかし、強固な物流モデルを一度つくってしまえば、その先には見たことのない新たな景色が広がることもまた、事実だ。

 それを如実に示しているのが、米小売最大手のウォルマート(Walmart)だ。同社は今年8月、ラストマイル配送プラットフォームを第三者に提供する「ウォルマート・ゴーローカル(Walmart GoLocal)」というサービスの開始を発表。10月には米ホームセンター最大手のホームデポ(Home Depot)が同サービスを利用し、即日・翌日配送の拡充を図ると明らかにした。この枠組みによってウォルマート側がどれだけのフィーを得るかは不明だが、日本円にして14兆円超の売上を誇るホームデポのラストマイル領域を担うことのメリットは計り知れない。

 日本国内でも似たような動きが見られる。その筆頭といえるのがコープさっぽろ(北海道/大見英明理事長)だ。自社で構築してきた自動倉庫を導入した基幹物流センターや、道内各所に点在する商品製造・配送拠点を外部にも提供。具体的には、同じく北海道を本拠とするサツドラホールディングスと包括業務提携を結び、今年10月から同社の物流業務を受託している(コープさっぽろ傘下の物流事業会社北海道ロジサービスが受託元)。また、学校や医療施設向けの給食の製造や配送の受託、配食事業なども手広く展開している。

 バローホールディングス(岐阜県/田代正美会長兼社長)も、グループ全体の物流戦略を担う中部興産(同/小池孝幸社長)を通じて、事業エリアである関西、東海、北陸、関東をカバーする物流拠点や配送インフラを自社で構築する企業。同社も東海エリアなどでは、中小の小売業の店舗配送を担うなど、外部へのインフラ提供をすでに始めている。

 このように、物流を経営戦略そのものと位置づけ、それを推進する組織づくり、部門間の連携、サプライチェーン全体を見据えた投資をすることで、競合企業あるいはEC企業にも伍するような、競争力の高い強固な物流網を構築することができる。

 そしてその先には、自社インフラを外部に提供する「外販」という、甘い果実を収穫することができるかもしれないのだ。そうなれば物流はコストセンターではなく、利益を生み出すプロフィットセンターに生まれ変わる。従来の収益構造は大きく変化し、既存のビジネスモデルそのものを変革することにつながるのだ。

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記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2015年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。

企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)済み。

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