焦点:ポケモンからバーキンまで、素人の「収集品投資」が過熱

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ポケモンカードが並ぶ米シカゴの店舗
2月24日、株や債券、コモディティーなんてもう古い。家に閉じ込もった素人投資家は今、ビンテージ物のハンドバッグから美術品の株券、果ては希少なポケモンカードに至るまで、通常の金融商品とは異なる資産を手当たり次第に買い漁っている。写真はザック・ブラウニングさんのポケモンカードのコレクション。シカゴで14日撮影(2021年 ロイター/Zack Browning)

[ロンドン 24日 ロイター] – 株や債券、コモディティーなんてもう古い。家に閉じ込もった素人投資家は今、ビンテージ物のハンドバッグから美術品の株券、果ては希少なポケモンカードに至るまで、通常の金融商品とは異なる資産を手当たり次第に買い漁っている。かつては大富豪や変わり者だけが暮らした「保護区」が、夢の「狩猟場」と化したようだ。

ロックダウン中に小金を蓄えた素人投資家は、価格が高騰しバブルが警戒される伝統的な金融市場の外に出て、より高いリターンを得ることを狙っている。そうした投機が今度は「オルタナティブ(代替)」資産の価格を引き上げ、中には過去1年間で数百パーセント値上がりする商品も出てきた。

昨今のゲームストップ株騒動では、手数料ゼロの取引アプリ「ロビンフッド」のおかげで個人投資家集団が手練れのヘッジファンドをかき回すのに成功した。同様に、投資資金わずか20ドルの初心者でも、デジタルプラットフォームを使えば収集品投資に手を出せるようになっている。

ポケモンカードが800%の高騰

投資価値はどこにでも転がっているようだ。

1990年代に大ヒットした任天堂のビデオゲーム「ポケットモンスター(ポケモン)」のカードは、この1年で価格が跳ね上がった。

ポケモンのキャラクター「チャリザード」の初版カードは、人気ユーチューバー、ローガン・ポールさんが10月に15万ドル(約1589万円)で購入したのを機に値上がりし、過去1年間で800%の高騰を演じた。最近の入札では30万ドルの値が付いている。

シカゴ在住のポケモン・ファン、ザック・ブラウニングさんが2016年、ポケモンカードを4枚買ったときの価格は各々5000ドルに満たなかった。現在、彼のコレクション全体の価値は推計300万―500万ドル相当に上る。

大学でファイナンスを学んだ後、ポケモン投資の道に進んだブラウニングさんは、ポケモンカードの復活ぶりに「びっくりだ、信じられない」と目を見張る。ブラウニングさんの見るところ、ポケモン市場の一部は株式市場よりも予想しやすい。株価は過大評価されている、と言う。

手っ取り早い高級品

もちろん、絵画などの収集品は株式や為替市場に比べて損益計算や需要の測定がずっと難しい。往々にして類似資産が少ない上、入札などを通じて時たま取引されるだけだからだ。

しかし調査会社ナイト・フランクが24日公表した高級品投資指数によると、美術品など最も高額な資産はコロナ禍中に下落したが、「比較的値ごろ感のある手っ取り早い高級品」は好調だった。

同社によると、入札価格に基づくAMR・オールアート指数が昨年11%下落した一方、1980年代に発売されたエルメスの代表的ハンドバッグ「バーキン」は17%上昇した。高級ワインやクラシックカーより堅調だ。

ナイト・フランクのリポートを編集するアンドリュー・シャーリー氏によると、昨年バーキンに付いた最高価格は20万ドルで、アジアの高級品収集家が「喜々としてオンラインで買いを入れた」という。

1商品に20万ドルも出せないという人々向けには、ニューヨークを拠点に2019年に始動したオーティス(Otis)などのプラットフォームがある。

こうしたプラットフォームはポケモンカードに始まり、昨年亡くなった伝説的プロバスケットボール選手コービー・ブライアントさんのサイン入りジャージまで何でも買って証券化し、その株式を投資家に販売している。株式は売買が可能だ。

オーティスは昨年、英国の芸術家バンクシーの作品の株式を1株20ドルで売り出した。同社によると、株価は70%値上がりして今月34ドルを付け、作品自体の評価額は72万2000ドルとなった。

オーティスの創業者であるマイケル・カーンジャナプラコーン最高経営責任者(CEO)はロイターに対し、投資家の中心層は年齢が25―45歳で、可処分所得が10万ドル以上だと述べた。

CEOによると、オーティスで売れた最も高い商品はスポーツカード・メーカー「フリーア」の1986年製バスケットボールカード・セットで、2カ月前の株価は10ドルだったが、その後305%上昇して40ドルを超えた。

ロイターは独自に価格上昇率の検証を試みたが、できなかった。

年金投資は禁物

別の収集品プラットフォーム「ラリー(Rally)」では、ユーザー数が30日ごとに倍増している。ジョージ・リーマーCEOが明らかにした。「数十万人」の投資家が利用しているという。

リーマー氏によるとラリーでも、希少なポケモンカードは10万ドル超えまで急騰した。

同氏は株式投資でロビンフッドなどのアプリが大人気になったことに触れ、収集品投資にも「他の個人投資で見られるのと非常によく似た力が働いている」と言う。

ただ、利益を確定する投資家は少ないようだ。リーマー氏によると、利益を再投資せず回収する投資家の割合は「1桁台の前半」だという。

オルタナティブ資産投資に飛び込む人が増える中、リスクを警告する声も多い。

ドイツ銀行の元シニア株式ストラテジストで、今は英国北部の美術品投資を行っているジョンポール・スミス氏は、一部のオルタナティブ投資家と熱狂的な株式投資家の行動にはほとんど違いがないと言う。

「バンクシーは『モメンタム投資』にほかならない。過熱したIT株のようだ。市場心理はどこでも似たり寄ったりだ」

もっとも、スミス氏が市場を追ってきた過去30年間で今が一番、伝統的資産に比べて非伝統的資産を買うことの方が「より愚かではなく」見えるという。株価が割高であるのみならず、中央銀行と政府の莫大な刺激策が、いずれインフレを引き起こすはずだからだ。

スミス氏は、投資家は情熱あるいは趣味と、投資を区別するべきだと話す。美術品のような市場は分野ごとに極めて難解な奥義があるため、利益だけが目的であれば、おそらく目的は果たせないだろうと言う。

「だれであれ、年金をつぎ込むことはお勧めしない」とスミス氏。ポケモン投資家のブラウニングさんも、そこは同意見だ。

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