アングル:携帯電話料引き下げ、物価かく乱の可能性 日銀見通しへも影響か

ロイター
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スマートフォンで写真を撮る若者
2月9日、携帯電話各社の通信料引き下げが物価のかく乱要因になる可能性が指摘されている。写真は浦安で昨年9月撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

[東京 9日 ロイター] – 携帯電話各社の通信料引き下げが物価のかく乱要因になる可能性が指摘されている。現時点でオンライン申し込み専用の料金体系の扱いが判明していないためだ。仮に反映した場合は消費者物価指数(CPI)の下押しが予想より強まる恐れがある。日銀は通信料引き下げを一時的な要因として整理するとみられるが、将来の人々の物価予想に影響を与えるかもしれず、注意すべきとの声も出ている。

携帯料金の値下げは菅義偉首相の看板政策の一つで、携帯大手3社は今春から低料金プランの提供を始める。大容量プランはKDDI(au)とソフトバンクが3月から、NTTドコモが4月から、従来に比べて1─2割程度値下げする。

さらに、オンラインだけで手続きを完了させる新料金プランとして、auが「povo」が2480円、ソフトバンクが「SoftBank on LINE」(仮称)、NTTドコモが「ahamo」が2980円でそれぞれ3月から始める予定。

総務省のデータによると、コアCPIを構成している523品目中、携帯電話通信料は「持ち家の帰属家賃」、「電気代」、「民営家賃」に次いで、4番目にウエートが大きい。SMBC日興証券のシニアエコノミスト、宮前耕也氏は、大容量プランの値下げがコアCPI(除く生鮮)の前年比を合計で0.2%ポイント前後押し下げると試算する。

ただ、オンライン申し込み専用のプランがCPIに反映されるかどうか、現時点では不透明だ。CPIには「誰でも利用可能なものを採用するという基本的な考えがある」(総務省の担当者)ためで、申し込みの際にインターネットしか利用できないということがどのように判断されるのかみえていない。

前出の宮前氏は「フタを開けてみなければ分からず、まさにかく乱要因。仮に反映されれば、コアCPI前年比の押し下げ効果は大容量プランの値下げと合わせて0.5%ポイントを超える可能性があり、注意を要する」と指摘する。

総務省は東京都区部CPI(中旬速報値)の3月分・4月分を3月26日と4月30日、全国CPIの3月分・4月分を4月23日と5月21日にそれぞれ発表予定で、確認できるのはやや先だ。

日銀の物価予想に与える影響

日銀が1月に公表した最新の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)によると、政策委員が予想する2020年度のコアCPIの前年比はマイナス0.5%。その後、21年度にプラス0.5%、22年度にプラス0.7%と上昇率を高めていくとの見方を示している。

この見通しには、携帯電話通信料の引き下げや新たなプランの影響は「反映方法次第で変わり得る」として織り込まれていない。仮にSMBC日興の宮前氏が試算したように0.5%ポイント超の下押し要因となった場合、単純計算で日銀の政策委員の21年度の物価予想をゼロ%前後に押し下げることになる。

一方、黒田東彦総裁は昨年10月の記者会見で、携帯電話料金の値下げについて、短期的に物価を押し下げることはあり得るものの、「あくまでも特定部門における一時的な価格変動であり、一般物価の全体の動向、趨勢を規定するものではない」と述べ、携帯料金の値下げは一時的な要因との見解を示している。

ただ、大和証券のシニアエコノミスト、末広徹氏は「携帯料金の値下げによって、他にも値下がりするものがあるのではという連想が働くとデフレマインドにつながる」と指摘。日本の物価予想の形成は現実の物価に影響されやすく、一時的な要因であっても人々の予想物価上昇率に影響を与え、それが結果的に物価の基調に影響していく可能性もある。

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