地方百貨店生き残りへ問われる「目利き力」 「イバラキセンス」高ブランド化への挑戦

2020/04/14 05:55
鈴木文彦 大和エナジー・インフラ投資事業第三部副部長

銀座、有楽町界隈は全国の自治体が特産物をアピールする「アンテナショップ」の集積地である。「ふるさと」感を押し出したアンテナショップが多い中、2018年10月にリニューアルした茨城県の「イバラキセンス」は一味ちがう。ショッピングモールや空港で見る有名百貨店のサテライトショップのような雰囲気だ。経営するのは水戸京成百貨店。地元逸品のトップブランド化にむけて、百貨店の得意とする「目利き」力がますます重要となりそうだ。

アンテナショップ集積地、有楽町にあるイバラキセンス。百貨店のノウハウがそこかしこに見られる

 茨城の逸品をトップブランドに

 「イバラキセンス」のコンセプトは「茨城の厳選された逸品を世界へ」。リニューアル前は、茨城県の特産物としてすぐに浮かびそうな納豆や干し芋などを揃えた典型的なアンテナショップだったが、「イバラキセンス」が目指すのは、茨城の逸品を世界に誇れるトップブランドにすることだ。インバウンドや富裕層が集まる銀座という立地を生かし、洗練かつ高級感を押し出すマーケティングを志向している。

 「イバラキセンス」は東京高速道路KK線(首都高に直結し銀座外周を走る無料道路)の高架下、外堀通りを銀座桜通りに入ったところにある。全面ガラス張りで店舗内が外から見渡せる。白地に金色の組子を配したファサードが印象的だ。ロゴデザインは六角形のバラ。ワンフロアの店舗に足を踏み入れるとまずは四季折々の催事販売が行われている。

 筆者が訪れたときには茨城県産の新鮮野菜をヨーグルトやジュレと一緒に楽しむフェアが開かれていた。その奥に定番商品の棚には茨城産のスイーツ等が並ぶ。向こうの壁面には笠間焼に代表される陶器、地酒などがある。百貨店でいえばデパ地下の銘菓・スイーツと雑貨フロアをまとめたような雰囲気である。

 物販フロアのさらに奥に、レストラン「BARA dining」がある。カウンター席の正面の壁は稲田石で茨城の観光名所、袋田の滝に見立てている。ランチタイムだったので季節限定の「あんこうの小鍋仕立て」(1,480円)を注文した。待つ間、お茶と一緒に「干芋羊羹べにこいも」が出てきた。物販コーナーにもあるので気に入れば買うことができる。

 アンテナショップにとってレストランは逸品のショーケースだ。百貨店でいえばデパ地下の試食がそれにあたる。東京の真ん中で茨城県の自然と文化ひいてはライフスタイルを体験し、茨城県の逸品の売り上げ拡大につなげる仕掛けがある。

 ブランド化を進めるために扱う商品の仕入れの基準も決まっている。選定基準の第1項は目利きによって厳選された茨城のいいもの、センスある逸品であること。ほかにも原材料が茨城県産であること、茨城県で加工していることなどの縛りがある。

 ここで地元百貨店の目利き力が頼りになる。量販店やショッピングモールが郊外進出し、ネット通販が伸長する中、単に駅前の大型店であるだけでは地方百貨店の経営が立ち行かなくなってきた。地元を知り抜き、洗練かつ高級志向の地方百貨店の生き残りをかけた新規事業としてアンテナショップは有望だ。

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