多様な価値観への対応を進める巨艦・阪急うめだ本店の“大仕掛け”とは

野澤正毅
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100坪にD2Cブランドを集積

 中間層にも2つのグループがあり、一つは結婚や子育てなどのライフイベントがあるミレニアル世代。もう一つは、上質な生活スタイルを持っているアッパーミドルの客層、いわゆる“阪急ファン”。「これらのお客さまとのつながりをOMOの取り組みによって強固にしていきたい」と佐藤氏は考えている。

 中間層を狙ったMDの新機軸の一つが、いわゆる「D2Cブランド」の“リアルショップ”の開設だ。D2Cブランドはインターネット発、EC専業のため、リアルの販路を持たないのが普通。しかし、OMOが進むにつれて、リアルとオンラインの販路を併用するブランドのほうが、売上が数倍に伸びるという実態もわかってきた。

 おりしもさらなる成長のため、リアルの販路を求めるD2Cブランドも増えてきた。長年の信用がある百貨店であれば、新興のD2Cブランドにとって、リアルの出店とブランディングに、まさにうってつけというわけだ。「お客さまにとっては、オンラインの商品を実際に手に取ることができるし、D2Cブランドにとっては、リアルのお客さまの反応を確かめられると好評。しかも、販売実績も大きかった」(同)

 阪急うめだ本店4階フロアでは、約20坪のイベントスペース「コトコトステージ」で、D2Cブランドのポップアップを期間限定で展開してきたが、好評を受けて、2022年4月、週替わりでD2Cブランドを紹介する約100坪の常設の売場「IT  CONTEMPORARY」を開設した。「D2Cブランドの人気の理由は、インフルエンサーのライフスタイルや価値観に、ユーザーが共感しているからだ。そのため『IT  CONTEMPORARY』は、SNSを基点にファッションだけでなく自らのライフスタイルを発信する作り手への“共感”を大切にするお客さまをターゲットにしている」(同)

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