ダイヤモンド リテール・カンファレンス2015開催レポート
オムニチャネル・リテイリングの革新
究極の顧客体験・顧客ファン化を実現する戦略的アプローチ

2015/04/20 16:57

<開会の挨拶>
SAPジャパン株式会社 代表取締役社長 福田 譲 氏

顧客エンゲージメントの最適化でビジネス拡大

難しさもあるが継続したチャレンジが不可欠

 

優れた顧客体験を感じているのは、わずか8%の消費者

 

SAPジャパン株式会社
代表取締役社長

福田 譲 氏

 今、国内ではインターネットユーザーの7割がオンラインで買い物をする時代。そのためEC市場は中期的に1.5倍から2倍の成長が予想され、海外から商品を購入するクロスボーダーショッパーも3倍に拡大すると言われている。日本企業にとっても、海外で流通チャネルを構築しなくても海外の顧客に向けて商品やサービスを提供できる機会が増えている。

 

 さらに企業の8割は、ネット上できちんとした顧客体験を提供できていると考えている。しかし実際に消費者視点では、その10分の1、わずか8%程度の顧客が「優れたカスタマー・エクスペリエンスを体験できている」とするにとどまっている。オムニチャネルやカスタマー・エクスペリエンスをテーマにしたカンファレンスも今回が3年目になるが、相変わらず関心の高いということは、さらに改善する余地があるということを感じているケースが多いということだと考えている。

 

NESPRESSOは究極のコーヒー体験提供で14年連続2ケタ成長

 

 SAPはもともと基幹業務システムが中心だったが、現在では7割近くがデジタルマーケティングやオムニチャネル、ビッグデータなどの関連システムが占めている。そうした事例の中には、例えばNBAのように、過去60年分のスタッツ情報(選手のプレー内容に関する統計数値)を公開することでファン層が広がり、新規アクセスが2倍に増えサイトの滞留時間も2倍になったことで放映権料が3倍に拡大した事例は、「ファン・エンゲージメント」と言う観点でクラブスポーツから小売業が学ぶべき事が多い。(今年の全米小売業協会(NRF)主催BIG SHOW 2015の「SAPキーノートセットション」でも好評だったトピックとしても記憶に新しい)。昨年のカンファレンスでも講演があったが、NESPRESSOは究極のコーヒー体験を提供するためにオムニチャネル化を図り、競合製品と比べて割高であるにも関わらず14年連続で2ケタ成長を続けているケースだ。

 

 またLEGOのケースではファンが作品をソーシャルサイトで公開し、1万票以上の「イイネ」を獲得すれば商品化され、しかも構成するブロックの情報を工場に自動的に直送することで製品化を時間短縮。超効率的経営によりROEはトヨタの4倍強というケース。これは、「ファン・エンゲージメント」の結果、LEGO自体はほとんど手を下さずに、ファンの作品は自動的に製品化され収益をもたらすようになる非常に興味深いケースもある。

 

 顧客をファン化する手法を確立することは難しさもある。しかしビジネスを拡大するためにチャレンジを続けることも重要なテーマとなる。

 

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