ダイヤモンド リテール・カンファレンス2015開催レポート
オムニチャネル・リテイリングの革新
究極の顧客体験・顧客ファン化を実現する戦略的アプローチ

2015/04/20 16:57

ガストではアプリ導入後、グル―プ全体を上回る業績アップを実現

 

 そうしたデータに応じて各ニーズに向けた、メニューの開発にもつながる。失敗すれば分析で検証し軌道修正していくことで、より精度が高まることになる。

 

 過去は広告を拡大することで、売上増につなげてきた。しかし、例えば自動車など高額商品、化粧品などのブランド商品と比較して利益が薄い外食産業では費用対効果は低いと考えるのが当然である。

 

 そこでより効果の高い媒体を考えた時に、コストベースで活用できる自社媒体であり、なおかつ消費者それぞれに発信できる媒体しかない。そこでアプリを自社開発することを決断した。

 

 まず投入したのはガストアプリである。来店客に向けてテーブルにアプリのダウンロード広告を設置しポイントやクーポンを配信する。さらにソーシャルメディアを連携させて、ポイント、クーポンのほかにフェア情報なども提供する。この仕組みを回していくことで、継続的な来店誘導を行っているわけだ。

 

 従来の新聞の折り込みチラシなどは何万部も配布していた。一方、ダウンロード数は圧倒的に少ないのが現状である。しかし、クーポン利用者はチラシを見てくる顧客の数を上回り、しかもコストは数百万円かかるチラシに比べて数10分の1で済む。しかもガストアプリのリリース以降は、ガストの業績伸長率はグループ全体の伸長率を上回るようになった。もちろん採取できるデータから顧客のプロファイリングを図りプッシュ通知も積極的に行っている。

 

SAPのソリューションを活用し分析を自動化

 

 費用対効果という点で、アプリ投入による効果は顕著に表れている。今後、我々が課題としているのはダウンロード数の拡大によるメディア化と最適なタイミングで最適なオファーを自動的に行う仕組みの開発・投入だ。すかいらーくグループの店舗の利用顧客は年間7000万から8000万人。スマホの普及率から推定すれば来店客の半分程度ダウンロードしてもらえれば最低でも2000万ダウンロードに達する計算になる。

 

 さらに分析を加えることで最適なタイミングで最適なオファーを届けることができるようにしたい。例えばダイエット中で肉類を控えていれば、肉類とともに野菜も豊富なメニューの提案やランチが早かった人には、夕方に来店オファーを送るといった仕掛けだ。そのためにそれぞれの顧客がどのようなステージにいるかを把握する必要がある。しかし複雑なデータを人力で回すのは不可能でありITにより自動化するしか方法がない。現在、SAPのInfiniteInsightを導入し、専門的なノウハウがなくても誰でも扱えるシステムを構築し、さらに効果を高めて行く考えである。

 

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