ダイヤモンド リテール・カンファレンス2015開催レポート
オムニチャネル・リテイリングの革新
究極の顧客体験・顧客ファン化を実現する戦略的アプローチ

2015/04/20 16:57

ソーシャルメディアを活用し自社メディアに顧客を誘導

 

 以前から顧客はネットで情報を得て店舗で購入している。つまりネットと店舗を行き来しており、その点ではO2Oは古くて新しいものだ。しかしこれからの店舗送客で重要なことは、ネットの技術を活用してKPIを検証して高速でPDCAを回していくこと。これまでにソーシャルメディアで情報発信し店舗送客した事例では、有楽町店の10周年キャンペーンでコメントを寄せればクーポンをもらえる仕組みや、11年から開始したネットで注文し店頭で受け取るサービスなどがある。

 

 さらにMUJI(DIGITAL)MARKETING3.0の段階では、顧客とのコミュニケーション改善に取り組んだ。従来からWEBを通じてコミュニケーションする場はあったが、2009年からソーシャルメディアの活用を順次始めた。そして2年ほど前から、ソーシャルメディアを活用して自社メディアに呼び込む作戦も打ち出した。

 

 MUJI to GOキャンペーンのケースもユニーク。前回はハードキャリー販売に成果があったが2014年の場合は新商品がなかった。そこで「無印良品の人をダメにするソファ」で売れたソファの経験を生かし、MUJI to Sleepと名付けてネッククッションをピックアップ。薪のはぜる音などサウンドアプリを配信、さらにYouTubeで寝ている人の動画を配信、それも13カ国語対応で展開した。これにより昨年対比で大幅な販売アップにつながった。

 

 こうした事例は、店舗での買い物の楽しみや非日常性、新たな発見のサポートをソーシャルメディアとデジタルデバイスで行ったことの効果だと考えている。

 

MUJI PASSPORTで顧客との関係性を維持・発展

 

 「情報過多」「モノ余り」「不況」の中で生き残るには、「最高」「最安」「最愛」の3つしかない。いかにして「伝えるか」ではなく、どうすれば「受け取ってもらえるか」だ。B2Cのメッセージは届きにくい。我々は様々なツールで店舗送客を図ってきたが成功事例も含めて局所的、部分的という反省もある。マーケティングによって引き上げた「ブランド関与への振れ幅」を安定させるためには、作り上げた関係性を維持する土台が必要になる。

 

 そして2013年5月にスタートしたのが「MUJI PASSPORT」。買物や店舗でのチェックインでマイルが貯まるほか、商品検索を容易にし在庫のある店舗を表示できるようにした。

 

 目的は3つあり、まずネット・リアルの区別なくファンとのコミュニケーションを図る、そして売上増につながる持続的な来店客数の増加、さらにマーケティング施策効果の可視化だ。従来からのクレジットカード、ネットメンバー、ソーシャルメディアなどのCRMをアプリで統合し「顧客時間」の全体的な把握を狙っている。

 

 すでに347万人がダウンロードしており、それも良品週間の際に急増した。中心となっているのは30代から40代の女性。14年上期の前年同期比実績ではMUJI PASSPORT提示率が5ポイントアップ、客単価は1.7倍、購買回数の上昇といった効果が出ている。実際のメリットとして、若年層に直接リーチできる媒体であることや、顧客の状況に応じて提示施策を変えられる媒体、休眠層にも直接リーチできること、媒体費用自体は0円であることなど。デメリットはポイント付与が必要なことくらいで、導入効果は圧倒的だ。

 

 無印良品では今後、ビッグデータの分析力向上や顧客の行動データの把握をさらに強化していく。経験やカンに基づくものではなく、データ分析から得られたマーケティング施策こそが重要であり、顧客接点のデータを統合し関係性を強化するためにDIGITAL Marketing Platformを構築し、分析を自動化、高速化し予測精度の向上を図っていくつもりだ。それが3.0+αへの発展だと考えている。

 

 

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