海外の提携小売で続々と稼働、イオンも提携したネットスーパー「オカドモデル」は成功するか

小野貴之(ダイヤモンド・チェーンストア編集部)
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従来、ネット通販(EC)の物流は郊外立地の大型倉庫から商品を配送する「集中型」モデルが主流であった。しかし、コロナ禍でEC需要が急拡大する米国市場では、ウォルマート(Walmart)をはじめとする実店舗リテーラーが、店舗を物流拠点として活用するスタイルが実績をあげている。在庫を顧客に近い拠点に分散配置する「分散型」のEC物流が一躍脚光を浴びる中、大型自動倉庫による「集中型」モデルの物流システムを提供する「オカド(Ocado)モデル」の成否の行方に注目が集まっている。
取材協力:高島勝秀(三井物産戦略研究所)

オカドのフルフィルメントソリューション
カジノ・グループやイーカ・グループで導入が進められているオカドのフルフィルメントソリューション

注目集まる「分散型」モデル

 集中型モデルといわれるEC物流システムの大きな特徴は、大規模な物流施設で自動化によるコスト削減を進めやすいという点だ。これに対し、分散型モデルは、物流拠点が多数必要になりコストが膨らむものの、顧客の近くに在庫を置くことで配送の迅速性を高めやすいというメリットがある。

 こうした分散型の取り組みについては、店舗を拠点として活用できる実店舗リテーラーが先行している。だが最近では、アマゾン(Amazon.com)が消費者の近くに立地する小型の配送拠点を新たに1000カ所設置する計画を発表するなど(参考記事)、EC専業者がMicro Fulfillment Center(小型物流施設、MFC)設置により分散型を模索する動きが生じている。

 そうしたなか、米国以外の市場では、中央大型自動倉庫を中核とする集中型のEC物流システムを提供する英国のオカドと連携したリテーラーの取り組みが成果を上げ始めている。オカドは、英国の自社ネットスーパー事業を別会社に切り離し、EC物流システムのベンダーとして各国で事業を展開しており、すでに英国外の6社と提携を結んでいる(図表①)。そのうち、仏カジノ(Casino)事業が2020年3月に、カナダのソビーズ(Sobeys)での事業が同4月に稼働している。

図表①オカドが提携を結んだ海外小売業

 これまでのところ、両社ともオカドのシステムが順調に実績を上げているとしており、ソビーズは対象エリアの拡大や第二の大型自動倉庫建設の計画も発表している。これらは“システムベンダー”としてのオカドの最初の実績と評価され、4月以降、同社の時価総額は急増している(図表②)

図表②オカドの時価総額の推移(単位は英ポンド、データ出所:YCharts

オカドモデルの有効性の判断は「時期尚早」

 オカドのシステムの好調について、米国流通に詳しい三井物産戦略研究所の高島勝秀氏は「コロナ禍でEC全体の需要が伸びた時期であること、それに加えて、分散型のEC物流が成功している米国市場での取り組みではないことから、その有効性を判断するのは現段階では時期尚早」と話す。

 しかし21年初頭には、米国の食品スーパー最大手であるクローガー(Kroger)がオカドのシステムを導入したネットスーパー事業を展開する計画が発表済みだ。前述のとおり、米国ではすでにウォルマートをはじめとする強力な実店舗リテーラーが、分散型の物流システムでEC事業を展開している。「そのような環境下で、オカドの集中型のシステムが威力を発揮できるのかは、EC物流の将来を展望するうえで大きな意味を持つものと考えられる」(高島氏)。

 日本では、国内小売最大手のイオン(千葉県/吉田昭夫社長)がオカドとの提携を発表している。「(オカドとの)事業の将来性、さらには日本のEC市場における勢力図を展望するうえでも、クローガーとオカドの事業の展開は要注目と言える」と高島氏は話す。

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