最新型ユニクロが前橋にやってきた!#1 佐藤可士和氏が語るユニクロとの17年間
2008年、「サステナビリティステートメント」を策定
一方、ロゴデザインや店舗デザインのように外に見えるワークの裏側で、2006年~2009年の間に佐藤氏がユニクロで取り組んできたことがある。2006年にユニクロのロゴを刷新し、ファーストリテイリングのロゴとステートメントを作ったことに続いて、2008年に「サステナビリティステートメント」を作ったことだ。それは、ファーストリテイリングが真のグローバル企業になっていくための準備でもあった。
「2006年のニューヨーク SOHO店オープンのすぐ後に、柳井社長から言われました。『海外展開を本格化していく上で、自分たちが何者か、その理念を答えられるように可視化しておかなければいけない』と。しかも、あなたたちは何をしている会社か?と聞かれて、こういう商売をしています、ではなく、こういう社会貢献をしています、と答えられるようにしておかなければいけない。それで、2008年、コピーライターの前田知巳さんと一緒にCSRステートメント(現・サステナビリティステートメント)を作りました。サステナビリティのCI(コーポレート・アイデンティティ)化を始めたわけです。やはりユニクロのパワーを最大化できること、服の力で社会に貢献していこうということで、ユニクロが2001年から続けてきた様々な活動を整理して、これからの指針として整えました。商品広告のキャンペーンではないので、あまり世の中には出ていないものですが」
「それからだいぶ経て、国連でSDGsが採択されてからは、世の中でも急速にサステナビリティとかSDGsが意識され始めました。実際、そこから慌てて何をすればいいのか?と考え始めた企業も少なくないと思います。でもユニクロはすでにコンセプトや活動指針ができていて、それに沿ってずっと活動してきていたので、慌てることはまったくありませんでした。淡々と、これまで通りに自分たちの事業に邁進していると思います。その姿勢はコロナ禍でも変わりませんでした。あの時、まだ早いかなと思ったけれど、ステートメントを作っておいて本当によかったと思いますし、今見てもまったくズレていないのです」
国連サミットで「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」いわゆるSDGsが採択されたのが2015年だから、その7年も前にユニクロと佐藤氏の間で自社のサステナビリティ指針を作っていたことになる。今回の前橋南インター店も、このステートメントに沿って生まれたものだ。
類まれなる経営者と天才的クリエイターは、今も禅問答を繰り返しながら、世界や時代のずっと先を走っているのだと思う。
次回「最新型ユニクロが前橋にやってきた!② 前橋南インター店のサステナビリティ設計」では、店舗の消費電力を55%削減した驚異のサステナビリティ設計について、ファーストリテイリング出店開発部店舗設計施工チームシニアマネージャーの髙木肇子氏、竹中工務店東京本店設計部アドバンストデザイングループ長の花岡郁哉氏に取材する。
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