「ダイソー」創業者・矢野博丈さんが「会社は潰れるもの」と考えて経営にあたった真意
“センミツ”を地で行く、とらえどころのない矢野さん
大創産業(広島県)の創業者である矢野博丈(やの・ひろたけ)さんは、まったくとらえどころがない方だった。
初めて取材した時には、4時間ほど席をともにしながら、わずか3ページのインタビュー記事をまとめるのに四苦八苦させられた。
それというのも、接触している間中、のべつまくなしでダジャレや冗談ばかりを口にするからだ。気がつけば、質問の大半は、はぐらかされてしまっている――。
“センミツ”とは、千のことを話したうちホントのことは3つくらいというほら吹き然とした人のことを指すが、まさに“センミツ”を地で行く方のように見えたのが第一印象だった。
真顔で長い話をするから、これは真剣な話であろう、とまじめに聴いていると「全部、ウッソー」という落ちがあったりする。一筋縄では、どうにもならない。
厄介なのは、そんな長い取材時間の中で刹那、鋭い経営論を口にすることだ。だから、集中を切らして、聞き流していることもできない。
常に遊び心を忘れていないから、発想は自由。「メキシコに出店する」とか「大道芸人を派遣する会社をつくりたい」とか、夢かうつつか境のないような独り言が満載だ。
その一方では、「この記者は、こんなことを考えているだろうな」と見透かし、大変な気配りがあったりする。
そんな矢野さんは、創業以来、「会社とは潰れるもの」という考えを持って経営に当たってきた。慢心を嫌い、手を抜くことを戒めてきた。健全だった会社や業界トップにあった会社の傾いていく様を嫌と言うほど見てきたからだ。