キットカットをナンバーワンにしたマーケター「アイデアより大事なこと」とは

2024/05/23 05:59
千田 直哉 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局長)
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 「ブライト」(クリーミングパウダー)や「キットカット」(チョコレート菓子)をナンバーワンブランドに育て上げた稀代のマーケターであり、ネスレコンフェクショナリーやネスレ日本社長兼CEOを歴任した高岡浩三さんを取材したことがある。



 高岡さんは言った。

 「ブライト」は「袋・詰め替え」と「低価格路線」で競合から大きくシェアを取る戦術が奏功した。「キットカット」は、コンビニエンスストアの商品改廃の周期がスピードアップしている状況を鑑みて、「2ヶ月期間限定商品」と「受験キャンペーン」を駆使し、成功した。

 根底には、綿密なマーケティング戦略と発想があるはずだと考え、「そうしたビジネスのアイデアはどうすれば浮かぶのですか?」と問うと――。

 秘訣は「いつも考え続けること」にあると言う。

 ちょうど、その時に読んでいた『カップヌードルをぶっつぶせ!――創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀』(安藤宏基著/中央公論社)の中にも同じようなフレーズがあったので驚いたことを覚えている。

 この本の著者である安藤宏基(現:日清食品ホールディングス社長兼CEO)さんは、同社の創業者であり実父である故安藤百福さんを振り返り、性格的特徴を人並みはずれた「執念」にあると断言。「物事は漠然と考えていてはだめだ。一心不乱に考え続けているからこそ、睡眠中にふっとアイデアが浮かびあがってくる」(P29)という故人の言葉を紹介している。

諦めずに信じ、行動することで道は通ずる

 もうひとつ。取材の中で、高岡さんは、アイデアよりももっと大事なものがあることを教えてくれた。

「画期的なアイデアが浮かんでも、それを具現化するプロセスで障害がたくさん出てくる。それでも諦めずに自分を信じて、障害を取り除き、具現化に邁進できるエネルギーや行動力を持っていることです」。

 なるほど。

 そう考えると、エネルギーや行動力がなかったばかりに花開かなかった物凄いアイデアは世間にどれほどあったことだろうか?

 みなさんの会社にも「物置き」送りになっている素晴らしいアイデアがあるかもしれない。

記事執筆者

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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