大手スーパーのマネでは生き残りは不可能!? 売上高100億円以下のチェーンの勝ち残り戦略

鈴木 武夫 (株式会社 日本コンサルタントグループ パートナーコンサルタント)
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エリアダントツ一番の商品を開発せよ!

 次に取り組みたいのが、「商品部の強化」です。

 具体的には、「棚割り」です。カテゴリー毎の商品棚割りは最低年2回実施できているでしょうか。これはできている企業・できていない企業にわかれるかと思います。棚割りは非常に重要な仕事です。これができていないと、1年中同じ売場となってしまいます。お客さまはどう思われるでしょうか。

 「商談」も見直してみましょう。自社はメーカーさん、問屋さんと“商談”ができているのでしょうか。お取引先さまとコミュニケーション・意思の疎通ができていないと、「取引先」として認識されません。昭和・平成は、メーカー・問屋さんが商品を売り込みに訪問していただける時代でした。しかし令和は、メーカー・問屋さんから「取引先」と認識してもらえないと、商品が買えない時代になりつつあります。

 「独自商品の強化」も重要です。つまり、自店に行かないと買うことができない商品です。生鮮3部門と総菜部門に関しては、中小チェーンのほうが小回りの良さを生かした工夫を凝らすことができます。やり方次第では大手チェーンには真似のできない品揃えや販売価格を構築できるでしょう。厳しい環境下で生き残るためには、ぜひともこの「商品」の分野で自社にしかない魅力を磨き、エリアでダントツ1番の商品を開発する必要があります。

「販売力」を強化するには

 「販売力の強化」にも取り組みたいところです。そのために実践したいのが、「単品実績の把握」です。全単品の実績を把握するのは難しいかもしれませんが、主力単品の「売上、粗利益(率)、商品在庫」は簡単にわかるはずです。品切れと過剰在庫にも注意しましょう。在庫が増え過ぎると、キャッシュフローにも影響します。

 バイヤーの売り込み商品をどう売って「販売」していくかも重要です。従業員1人ひとりが誠心誠意、気持ちを込めて商品を売り込めば、お客さまにも必ず通じます。「なにこれ」「買ってみたい」「食べてみたい」という感動をお客さまに与えましょう。そのためには、ただ商品を売場に置くだけではダメです。POPやマイクパフォーマンスなど、従業員全員で商品を売り込んでいくのが大切です。

 価格戦略に巻き込まれないことも大事です。当然のことですが、価格は重要な要素です。大手のスーパーマーケットと同じ価格で商品を販売するだけでは利益は取れません。同質化からの脱却(ナンバーワン志向)、異質化への挑戦(オンリーワンへ)で独自色を磨きましょう。

 繰り返しになりますが、人が成長しないと企業も成長しません。100億円以下の企業が500億円・1000億円チェーンの真似をしたところでうまくいかないことがほとんどでしょう。それはなぜか。

 大きな企業は、PDCAを回しながら仮説と検証を繰り返した末に、その売場を構築しています。大手のチェーンn売場には多くの場合、「プロセス」があります。だから、簡単に真似ができないのです。見かけが似ている売場はつくれるかもしれませんが、このプロセスがないために継続できず、挫折してしまうのです。残るのは不良在庫の山です。

 大切なのは、バイヤーや店長など少数精鋭の主力メンバーが集まり、喧々諤々と話し合い、みんなで自店の方針を決めることです。方針が決まれば、あとは全員参加で徹底的に売り込むだけです。大きな企業の長所は真似するのはいいですが、同じことをやるだけでは意味がありません。

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記事執筆者

鈴木 武夫 / 株式会社 日本コンサルタントグループ パートナーコンサルタント

埼玉県出身。大手食品スーパーから中小スーパーを経験し、商品部の業務改善・利益改善に従事。小売業での経験を生かし食品スーパー、食品メーカー、流通機器メーカーへの商品政策、販売政策、店舗レイアウト、棚割、陳列、演出、数値分析などのコンサルティングも手がける。モットーは「実行なくして実効なし」、スピード感のある仕事をすること。

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