アークス代表取締役社長 横山清
食品小売業界に迫るシンギュラリティ M&Aで1兆円の企業をつくる

聞き手・構成:阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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今年9月、新システムが稼働開始

──今年9月から稼働する新システムも、来たるべき新しい仲間にとって魅力的なものと言えますね。

横山 実際、「いつ新システムは動き始めるのか」と、先ほど申し上げた“お話中”の企業からも聞かれています。システム統合基盤構築プロジェクトは5年間で約100億円を投資する巨大なものですが、まさに1兆円体制をつくるための布石となるものです。AI (人工知能)による客数予測を踏まえた自動発注の研究にも着手するなど、業務の見直し、業務効率を改善できるシステムで、今後参加する企業に対しても容易に対応できる柔軟性を持っています。

──店舗投資よりもシステム投資を優先させている理由は何でしょう。

横山 もちろん、管理システムが陳腐化して入れ替える必要がある時期に差し掛かっているのも理由ですが、これが完了すると、瞬時にして販売データや買い物動向を処理でき、商品政策や営業政策に生かすことができるからです。我々が掲げる地域密着、地域愛着型SM経営にいま必要な機能と言えます。そして、未来のアークスグループの仲間たちも、これを待ち望んでいます。

──新システムが動き出した後は、店舗への投資ということになりますか?

横山 店数は増やしていきますが、新店を出すかといえばそれは別の問題です。当社は積極的に店舗改装や居抜き出店は行っていきますが、まったくの新店はあまり多くはないでしょう。投資効率が低いからです。長崎屋跡地にできたショッピングセンターに核テナントとして出店しているスーパーアークス中島店が良い例です。室蘭駅周辺の好立地店舗なのですが、長崎屋が当時投じた金額の何十分の1という低コストで出店できています。

 これから行うのは規模拡大のための投資です。その意味では、先ほどから申し上げている通り、M&Aに対して投資をし、それにより店数を増やしていく考えです。1店舗あたり10億円で合計10店舗、100億円を投資するのと、同じ資金でM&Aをしてその数十店という店舗網を獲得するのとではどちらが投資効率が高いのかという話です。長期戦になればコスト構造が低い方が最後まで生き残れるわけですから、投資が過大になりがちな新店への投資は慎重になっていきます。

 私は、「M&Aは、マインド(意識)&アグリーメント(合意形成)」だと言っています。SM企業は現在、同じような課題と向き合っており、その課題を解決する術を探しています。その同じ道筋をともに歩く仲間を見つけることがまさにM&Aなのであり、当社が繰り返し行ってきたことです。その意味で、中堅企業にとっての突破口となり得るのが合従連衡ですから、アークス方式はこれからの中心になると言えるでしょう。

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聞き手・構成

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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