アークス代表取締役社長 横山清
食品小売業界に迫るシンギュラリティ M&Aで1兆円の企業をつくる

聞き手・構成:阿部 幸治 (ダイヤモンド・チェーンストア編集長)
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 一方で、ご高齢のお客さま数人から、セミセルフレジをやめるようにとの嘆願のお手紙も頂戴しました。その内容をかいつまむと、「買い物をしたらお金を払い、すぐに帰れと言われているようで、セミセルフレジには反対だ」という趣旨のものです。

 現在は過渡期であるため、こうした意見もいただくわけですが、我々SMがテクノロジーを導入するということは、お客さまに対するアンチテーゼとなることも念頭に置かなければなりません。きれいで、商品が揃っていて、無人で運営されている店があるとして、それが、お客さまにとって果たして理想の店なのか、ということを我々は考えるべきです。

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 少しセンチメンタルな表現になりますが、“人は群れて生きる”もの。我々は技術を取り入れると同時に、人との触れ合いといった部分にもどう対応するかが求められているのです。

 そうした思いを込め、アークスでは、2018年のスローガンとして「お客様第一主義、技術的特異点に備えて全社が心技一体で贏かつ」としたのです。

 「お客様第一主義」を掲げる企業は数多くありますが、本当にできているかどうかを考えると、永遠の課題であると言えます。

「M&Aは『マインド&アグリーメント』。課題を解決するために、同じ道筋を歩む仲間を見つけることだ」

3000億円前後の連合をリージョナルで3つつくる

──“心”は、お客様第一主義であり、“技”は新しいテクノロジーの導入、どちらかに肩入れすることなく双方のバランスを取り、業界で勝ち残っていこうという考えですね。こうした不確実性の高い時代を勝ち抜くために、必要な力は何でしょう?

横山 資本力であり儲ける力です。ただ、かつてのように、単に企業規模が大きければそれで良いというわけではなく、最低限必要な規模を満たせば良いというものです。

 競技種目がはっきりしていた時代は、企業規模が大きいほど有利でした。2兆円、3兆円といった売上規模があれば、バイイングパワーと効率的な仕組みで相手をノックアウトできました。ただ、いまは相手が目の前にいる競合だけではなく、さらにいえばいま自分が勝っているのか、はたまた負けているのかすらはっきりとは自覚できない、異次元の競争環境に置かれています。そうした中では、大きすぎることはまた弱点になるのです。

 とはいえある程度の規模がなければ、将来のための十分な投資もできず、人材も集まらないため、そもそも生き残ることができません。私は、その規模を1兆円前後ととらえています。

──現在売上規模は5000億円台です。どのように1兆円体制を築きますか?

アークスの店舗
アークスは現在北海道で約3000億円、東北で約2000億円の売上規模を持つ。東北の売上を増やすとともに、M&Aにより関東周辺で3000億円前後の売上をつくり、1兆円連合の形成をめざす

横山 M&A(合併・買収)です。

 ナショナルチェーン、あるいはスーパーリージョナルチェーンで1兆円規模というのは、地域対応が重要な競争要件となるSMの商売では、弱みの方が露呈しやすい。一方、1つのリージョナルで3000億円前後の塊を3つつくれば、地域に密着した強さを発揮しながら、規模のメリットも得ることができます。アークスはすでに北海道で3000億円、東北で2000億円程度の売上規模を有しているので、東北を3000億円に増やし、あとは関東周辺で3000億円の連合をつくることができれば、その目標に到達します。現在、5~6社ほどと(提携などに関する)お話をしている最中です。もちろん相手の都合もありますし、当社の都合もありますので実現するかはわかりませんが、単独ではできなくとも、アークスグループに入ればできることがたくさんあります。

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聞き手・構成

阿部 幸治 / ダイヤモンド・チェーンストア編集長

マーケティング会社で商品リニューアルプランを担当後、現ダイヤモンド・リテイルメディア入社。2011年よりダイヤモンド・ホームセンター編集長。18年よりダイヤモンド・チェーンストア編集長(現任)。19年よりダイヤモンド・チェーンストアオンライン編集長を兼務。マーケティング、海外情報、業態別の戦略等に精通。座右の銘は「初めて見た小売店は、取材依頼する」。マサチューセッツ州立大学経営管理修士(MBA)。趣味はNBA鑑賞と筋トレ

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