実質9%値下げよりも影響大?ユニクロ直貿化宣言で業界地図は大変貌か?
作りすぎはすでに解消 余剰在庫は競争負けの結果
2月10日の日経新聞によると、アパレル企業の仕入れは最大で4割削減されたようだ。そこで、私は2019年までの売上と総投入量を調査した。驚くことに、これだけ世の中で「作りすぎ」が指摘されているのにも関わらず、10年間変わらず、総投入量は40億点で横ばいだった(別のコンサルタント会社は30億点だとしているが、いずれにせよ日本の人口を考えればオーバープロダクションであることに変わりはない)。
考えてみれば当たり前で、日本の市場は約40%がトップ10社、残りの60%に2万社といわれるSME (Small and medium sized enterprise:中小企業群の意味)で構成されているウルトラロングテール業界だ。これらの企業の足並みなど揃うわけがない。誰かが仕入れを減らしても、誰かが「チャンスだ」とばかりに仕入れを増やす。
しかし、20年、そして、21年(アパレルは半年前に調達計画は終わっている)の仕入れを調査し類推したところ、前年比で総投入量は約80%となっているようだ。しかし、これをもってアパレル業界が「ようやく過剰生産の適正化に乗り出した」と考えるのは誤りである。なぜなら、20年、21年の仕入れ削減は、COVID19の影響により、山のように売れ残った残在庫を破棄するためだからである。しかし、依然余剰在庫が残っているのは、在庫を生み出すもう一つの変数である消化率の問題だ。量の問題が解消されても、消費者が欲しいと思う商品が作れなければ、低い消化率のまま量が減る。だから余剰在庫は減らないのである。
これは、野球で考えればよい。3割バッターの打席数を減らせば、打率が上がるかというとそういうわけではない。100打席たった3割バッターが、50打席になったら6割バッターになるなどということはないわけだ。つまり、競争負けしているから余剰在庫が生まれ、ワークマンや西松屋、ユニクロなどは昨対比を超える売上をあげているのである。この問題を解決するには、リードタイムの問題より、ブランドとしてのあり方をどうするか、また、異常に高い価格をどうグローバルの常識レベルに下げられるかということになる。
在庫8割削減が、会計制度の改善を促す
しかし、この8割削減は業界横断的に副次的な効果を見せるだろう。それは、今から我々が買おうとしている春夏の商品は、実は、昨年仕入れられて残ったものが多いのだが、消費者はなんのためらいもなく買うだろうからだ。。
従来の概念では、なんの根拠もなく、
「ベーシックは3年持つが、ファッション商品は1年で飽きられる」というものだった。
しかし、私は外で取材を受けるたびに、いわゆる「ファッション商品」と呼ばれるものを着て、「この商品はいつ買ったかわかりますか」と聞くことにしているし、相手が女性なら、なおさら「その服はいつ買ったのですか」と聞いている。大方、最近の傾向は「3年前です」とか「去年です」などというもので、「今年買いました」などという人にお目にかかったことがない。実際、ある社長の言葉を借りていうなら、「ベーシックだとかファッションだとかいうがその定義をいってみろ」といわれ答えられる人はいない。
つまり、思考停止に陥り、「われわれはユニクロじゃないから、来年は在庫の評価を下げる、あるいは、損失計上する」ということを、なんの疑問も持たずに何十年も続けているわけだ。
しかし、今年、年度落ちの商品が混ざっている店頭を、華やかなVMDで魅せ、世界観を提示できたとき、われわれは、そこに陳列されている商品が今年のものか昨年のものかを見分けることができるだろうか。少なくとも、私はノーである。とくに、白黒ベージュなどの定番カラーになれば、それらを見分けられる人はほとんどいない。
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