実質9%値下げよりも影響大?ユニクロ直貿化宣言で業界地図は大変貌か?

河合 拓
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「会計士の先生から教えてもらった」はとんでもない勘違い

今やセールに依存していると言ってもいい、ショッピングセンターの体質は変わるか?(tylim / iStock)
「値引きしないこと」「仕入れた商品は最後まで売り切ること」が業績を上げる秘訣。在庫削減で、アパレルの体質は変わるか?(tylim / iStock)

 今年、アパレルは「なんだ、年度落ちでも値引きせずに売れるじゃないか」ということ、ライトオフや評価減(鮮度が落ちるため、在庫の簿価を下げること)が無意味であることを学ぶことになる。さらには、再プレスし、着こなしを提案すれば3年落ちでも、時に、5年落ちでも売れる商品は売れるということを身を持って知るだろう。

 私は、コンサルティングを引き受けたアパレルで、常に「値引きをしないこと」、「仕入れた商品は最後まで売り切ること」が業績を上げる秘訣であり、そのためには、衣料品が持つ「価値の残存期間」と「会計制度(何年で評価するか)」を同期させるべきだ、といってきた。しかし、不勉強な人達(中にはMBA取得者もいた)は、「いや、会計士の先生からいわれたのだ」という。私は、「会計士の先生というのは、ルールが年度ごとに変わったり、期間損益を操作したりしていないかをチェックする仕事をする人で、そのズボンが何年プロパー価格で売れるのかを決めるのはあなただ」といっている。

 こんなところにも、アパレル企業の自らゼロベースで考える力のなさが垣間見える。

 もうすぐ、3月末でアパレル企業の決算が出揃うことになるが、業界を震撼させる破壊的な結果を目の当たりにする可能性が高い。もちろん、これはCOVID19が理由であり正常収益状態でないことはいうまでもない。

 私には業界の5年後がくっきりとした解像度をもって見える。問題の先送りはなんの問題解決にもならないことを知って頂きたい。また、基本的な論理力、分析力のなさは企業を窮地に陥れるし神風はもはや吹かない。冷静に市場を分析し、それが自らの既得権益を脅かすものであっても、反撃にでるための戦略思考を身につけてもらいたい。春からは、私は人生の総決算の一つとして「ひとづくり」のため、大阪でも教鞭を持つことになった。一人でも多くの学生や若い世代がこの業界を魅力に感じ、そして、プライドと自信をもって働ける産業になってもらいたいと思う。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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