「亜熱帯化」でも売上を伸ばすユニクロ、伸び悩むアパレルとの違いとは
この夏は前年に続く記録的な猛暑で9月も彼岸中盤(21日)まで真夏日が続いたが、それを好機に売上を伸ばした百貨店衣料品やユニクロに対し、チェーンストア衣料品は逆に夏期の売上が落ち込んだ。いったい何が明暗を分けたのだろうか。

亜熱帯化シフトに成功したユニクロ
2023年(22年9月〜23年8月)、24年(23年9月〜24年8月)と続いた秋口の残暑と暖冬、長く暑い夏で衣料品の売上はどう変わったのか。10年前の14年(13年9月〜14年8月)からの変化を検証してみたら、チェーンストア衣料品の対応の遅れが顕になった。
百貨店衣料品の14年の売上季節指数は冬期(27.04%)、春期(26.19%)、秋期(25.14%)、夏期(21.63%)の順で、「秋冬期52.18%:春夏期47.82%」と秋冬とりわけ冬期に偏っていた。単価の高い防寒アウターが冬期の売上を稼ぎ、単価が下がる夏期は売上の水位も下がるという構図が定着していた。
温暖化が急進した23年では冬期が25.94%と1.10ポイント(pt)も低下して0.17ptの低下にとどまった春期(26.02%)に抜かれ、25.14%と動かなかった秋期が続き、夏期は1.27ptも上昇したが22.90%と最下位は変わらなかった。温暖化が継続した24年では、わずかに0.10pt回復した冬期が26.04%と、0.01ptの伸びにとどまった春期(26.03%)を僅差で逆転し、0.15pt低下した秋期(24.99%)が続き、夏期はさらに0.04pt上昇しても22.94%と最下位は動かなかった。とは言っても、14年からは夏期が1.31ptも上昇して冬期が1.00pt低下し、「秋冬期51.03%:春夏期48.97%」と1.15ptも動いているから、温暖化の影響は顕著だった。
より変化が顕著だったのが国内ユニクロだ。14年は11月下旬の創業祭売上が大きい秋期(29.13%)が最も高く、防寒アウターやヒートテックが強い冬期(27.54%)が続き、春期(22.90%)、夏期(20.42%)の順で、「秋冬期56.68%:春夏期43.32%」という極端な秋冬偏重だった。
23年は秋期が残暑もあって27.06%と2.07ptも落ち込み、防寒アウターが後ろ倒しされた冬期が28.55%と1.01pt上昇して首位になり、コロナ明けで1.20ptも上昇した春期が24.10%と続き、夏期は0.13pt低下して20.29%とさらにシェアを落としているから、暑く長い夏にMD展開が対応できなかったのではないか。
24年はさらに0.85pt落ちても26.21%と秋期が最も高く、2.76ptも落ちた冬期が25.79%で続き、さらに1.30pt上昇した春期が25.40%で続き、夏期は2.31ptも急上昇しても22.60%と最下位は変わらなかった。14年から夏期は2.18pt、春期は2.50ptも上昇して秋期は2.92pt、冬期は1.75ptも低下し、「秋冬期52.00%:春夏期48.00%」とシーズンバランスは4.68ptも動いている。23年5月のコロナ明けや24年5月以降の消費好転という消費環境の変化も大きいとは言え、政策的にMD展開と予算(調達と売上)を春夏シフトしなければ
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