アフターコロナの小売像その2 収束後も品薄が続く理由

森谷信雄(ライター)
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新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、食品スーパーでは品切れや商品の品薄が多発している。「パニック買い」が起きたトイレットペーパーやティッシュペーパーなどに加え、「巣ごもり消費」が浸透し、パンなどを家庭でつくるという需要が増えた影響で、小麦粉製品の品薄が続いている。アフターコロナの小売の世界では、こうした商品の品薄や品切れが頻発する可能性が指摘されている。

店頭では小麦製品の不足続く

 小麦粉、ホットケーキミックス、お好み焼き粉。現在、食品スーパーで品切れ、品薄になっている食品である。

 この品薄状態に乗じて、フリマアプリでは小麦粉1kgなどは通常200~300円のところを900円、あるいは1000円以上の高値で転売されている。EC大手でも本体は妥当な価格設定ではあるものの、送料を800~900円にしている悪質なケースも見られる。

 なぜ、小麦粉が品薄なのか。それは、「新型コロナウイルスの影響で飲食店が休業し、外出自粛やリモートワークによって自宅での消費が急増しているため」と指摘されている。

 確かに理解しやすい理由だが、それだけではない。最近相次いでいる食品の品薄や品切れは、少し前にマスクやティッシュペーパー、トイレットペーパーで起きた現象が食品においても見られていることによるというのだ。

 マスクについては、すでに政府が高値転売を法律で禁止している。しかし、小麦粉のような食品には、こうした禁止令がでておらず、転売でひと儲けをねらう業者や個人、いわゆる「転売ヤー」にとって絶好の機会となっている。

品薄・品切れが起きるワケ

 それにしても、なぜ品薄・品切れが起こるのだろうか。品薄になるカラクリをわかっている、意識の高い消費者は「品薄になりそう」という情報を得ても、すぐに買い溜めや買い占めに走らずに冷静な行動をとる。

 しかし、多くの消費者(おそらく7、8割はいるとみられる)は、「小麦粉がなくなったら、揚げ物もできないし、お菓子づくりもできない」と不安になり、冷静な行動ができなくなる。そして、いつもなら1つしか買わないような商品を2つ、3つと購入していく。店頭で品薄状態の棚をみると、さらに不安にかられ、余計に買ってしまうのである。

 すると冷静だった“意識の高い”消費者も、転売されている価格を目にして、「やっぱりこの先、小麦粉がなくなるのではないか」と考え、買いに走ってしまう。すでにトイレットペーパーやティッシュペーパーなどの商材において、消費者がこのような行動をとってしまうと証明されている。

 アフターコロナでは、世界的に供給が不安視されている商材が数多くある。風説まがいの情報によって、価格が吊り上げられたり、実際、品薄あるいは品切れになったりする商品がたびたび現れるとみられる。

 一例が、最近も各メディアで報道が流れた輸入バナナだ。現在、食品スーパーの店頭では、「バナナはお一人様1点限りでお願いします」と書かれた張り紙をよく見かける。

 これは、輸入バナナの供給の大半を占めると言われるフィリピンからの輸入が減少しているためだ。フィリピンでは、新型コロナウイルスの影響で都市封鎖(ロックダウン)を実施しており、移動が制限され物流網が寸断されている。これにより、供給が著しく減っているのだ。

 生鮮食品のバナナを転売するのはさすがに難しいが、アフターコロナの世界では、供給のバランスが崩れた食材や食品の価格を吊り上げて転売する転売ヤーが暗躍する可能性が高い。今のうちから、商品の需給動向をしっかり把握しておく必要がありそうだ。

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