「牡蠣」のレストラン営業、卸売を展開するゼネラル・オイスター、絶好調の要因は?

千葉 哲幸 (フードサービスジャーナリスト)
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営業時間短縮化の中でも客単価アップを可能に

 次に「卸売事業」を見ていこう。同事業の売上高は3億3600万円(22年3月期の1億7200万円に対し+94.7%)、営業利益は1億1000万円(22年3月期の6000万円に対し+84.1%)だった。

 好調の要因は、同社の牡蠣を仕入れている飲食店が増えて、その仕入れ量が増え続けていることにある。この現象の背景について、吉田氏はこう語る。

 「たとえば、コース料理が主体のレストランで、当社の牡蠣をコースに入れないでアラカルトでメニューに入れておくと、お客さまはコースにプラスして牡蠣を注文され、客単価が上がっています。客単価3800円の居酒屋が当社の牡蠣を導入したところ、客単価が200円アップしたという例もあります。すべてのお客さまが牡蠣を食べているわけではないですが、牡蠣がきっかけでアルコールの消費量も増えているようです」

ゼネラル・オイスターが提供しているコースメニュー「オイスターペアセット」6578円(税込)の中の「シーフードプラッター」のイメージ

 「コロナを経験して飲食店を取り巻く環境が変わってきています。まず、商業施設などの館が営業時間を短縮化しています。かつては18時の予約と20時30分の予約を入れるということをしていましたが、それができないところが増えてきた。営業時間の短縮化は人手不足もあるでしょう。そのような状況を打開するために『客単価アップ』は必要とされています」

 ちなみに、飲食店が同社の牡蠣をメニュー化する際、特別なことは何も必要ないという。完璧と言える安全性を浄化施設で仕上げていることから、店では牡蠣の殻をむくだけ。同社では牡蠣の保管方向から提供方法にいたるまで、しっかりとした取り扱いの仕方も指導している。このような支援体制を構築していることが、同社の卸売部門の好調を支えていると言える。

 今後の展望について、吉田氏はこう語る。

 「現状、売上高は店舗事業が8割、卸売事業が2割という構成となっています。飲食店に関しては、これから勢いよく出店するという状況にはなりません。一方、卸売のオファーが増えてきていて、こちらは店をつくるといった初期投資が不要なので、これを増やしていきたい。牡蠣の生産から販売までの六次化にしっかりと取り組んで行きます」

同社が「牡蠣」のためにつくったワインのオリジナルブランド「CACCCI(カッキー)」。

 コロナ禍は飲食業界の営業の在り方を大きく転換させた。営業時間の短縮化について指摘があったが、値上げトレンドが継続する中で「客単価アップ」は喫緊の課題と言えるだろう。その点「牡蠣」は飲食業界にさまざまな解決の糸口をもたらしている。

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記事執筆者

千葉 哲幸 / フードサービスジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』編集長、商業界『飲食店経営』編集長を歴任するなど、フードサービス業界記者歴ほぼ40年。業界の歴史を語り、最新の動向を探求する。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年発行)。

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