春闘集中回答日、変わる賃上げ トヨタはベア見送り・電機は多様化

ロイター
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都内を歩く人々
3月11日、2020年春季労使交渉(春闘)で主要企業が11日、労働組合の賃金要求に対して一斉に回答した。写真は都内で2月撮影(2020年 ロイター/Athit Perawongmetha)

[東京 11日 ロイター] – 2020年春季労使交渉(春闘)で主要企業が11日、労働組合の賃金要求に対して一斉に回答した。トヨタ自動車が基本給を底上げするベースアップ(ベア)を見送った一方、大手電機は福利厚生に使えるポイントを上乗せする企業があるなど多様化しており、賃上げのあり方が変化してきた。

全日本金属産業労働組合協議会の髙倉明議長(自動車総連会長)は、米中対立の長期化や英国によるEU離脱の問題、新型コロナウイルスの感染拡大、株式市場の混乱などで交渉環境は厳しかったとしたが、「多くで昨年並みの賃上げ回答を獲得し、昨年を上回る賃上げを引き出した組合もある。景気の底割れを回避するという労使の役割を一定程度果たすことができた」と総括した。

自動車業界は、厳しい回答となった。トヨタ自動車は基本給を底上げするベアを2013年以来、7年ぶりに見送った。前年実績は1万0700円で、労組側は定期昇給とベア相当分を含む総額で月1万0100円を求めていた。会社側は、人材育成に向けた研修や異業種企業への出向など「人への投資」を含め、全組合員1人平均で月8600円の「賃金改善」を労組に回答した。

トヨタ総務・人事本部の桑田正規副本部長は他業界の企業と比べ「トヨタの賃金水準はすでに国内トップレベル」にあり、これ以上の引き上げは雇用などに影響が出てくる恐れがあるとし「なかなか難しい」と話した。新型コロナウイルス感染拡大の影響や主力の中国市場鈍化といった事業環境の現状は「反映していない」としている。

マツダもベアをゼロとした。一方、人材育成などの基盤整備のための原資として組合員1人当たり月1500円相当を拠出する。

日産自動車は、ベアや定期昇給などを含む賃金改善の総額を前年実績から2000円下回る7000円とした。ホンダは、ベアと意欲的に取り組んだ従業員への加算分の総額で1500円と回答。ホンダ労組はベア・加算分1000円ずつの計2000円を要求していた。

一方、大手電機はベア7年連続となり、一部で前年を上回るベアもあった。金属労協の野中孝泰副議長(電機連合中央執行委員長)は各社の回答状況について「組合員の期待と社会的要請に応える水準で評価できる」と語った。

電機大手では、パナソニック、三菱電機、富士通、NECは、ベアに相当する賃金改善額について、前年と同水準の月1000円で決着。日立製作所は1500円(前年は1000円)、東芝は1300円(同1000円)と増額とした。村田製作所も1400円(同1000円)と増額だった。

ただ、回答は「人への投資」などを含めて額を示すケースが目立った。東芝は1000円の賃金改善に、教育などに使える福利厚生のポイント300円を上乗せした。NECは賃金改善の500円と福利厚生に使えるポイント500円の総額で示した。パナソニックの1000円も、賃金改善と確定拠出年金(DC)の掛け金の増加分の総額とした。

電機連合は、統一交渉での改善水準の方針とした「1000円以上」の回答を得たとして「(回答が)バラけたとは見ていない」としている。

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