焦点:世界の大企業設備投資、今年は10%増 10年ぶりの高い伸び
[23日 ロイター] – ロイターがリフィニティブのデータを分析したところ、世界の非金融大手企業4100社(時価総額10億ドル以上)が今年計画している設備投資総額の伸び率は10%に達し、過去10年間で最も高くなりそうだ。コロナ禍の打撃からの経済回復が始まり、企業の収益改善とキャッシュフロー拡大も動きだしているためだ。
アナリストによると、(1)借り入れコスト低下(2)各国政府のインフラ支出(3)グリーンエネルギーへの世界的な移行――が今年の設備投資を押し上げる。来年には設備投資は鈍化が予想されている。
JPモルガンのグローバル・欧州株式戦略責任者ミスラフ・マテイカ氏はノートに「企業収益力の力強い回復を考えれば、今年の設備投資は加速軌道に入る。企業収益が設備投資に先行するパターンはこれまでかなり一貫している。銀行融資基準の緩和が続いていることも設備投資判断にプラスになる」と述べた。
ロイターの分析では、4100社の今年第1・四半期の合計フリー・キャッシュフローは3319億6000万ドルで、やはり10年ぶりの高水準だった。
過去数年を振り返ると、世界的な大手企業は積み上がった手元現金を設備投資よりも自社株買いや債務返済に充当してきた。これは米中貿易摩擦、次には新型コロナウイルス危機を巡って、不確実性に直面したからだ。
しかし、パインブリッジ・インベストメンツのグローバル株式責任者アニク・セン氏は、今年は設備投資に資金が振り向けられがちだろうと指摘。「従来は、設備投資は効果が得られるまでに時間がかかるため、株高材料とは見なされにくかった。今の設備投資には自動化、デジタル化、クラウド化といった特性がある。以前よりずっと短期間で効果を上げられ、高い内部収益率が実現できるようになり、中期的なキャッシュフロー改善予想ももたらしてくれる」と分析した。
地域ごとに見ると、欧州企業の設備投資は13%増、米企業は11%増、アジア太平洋企業は9.7%増の見込み。セクター別ではハイテクが17.4%増、一般消費財が17.3%増、公益が13.8%増などとなっている。
インテルは今年、最先端半導体の生産能力拡充のため200億ドルを投じると発表。ソニーグループは、戦略的投資として向こう3年でおよそ180億ドルを振り向けるという。
一方、新興国は新型コロナウイルスワクチンの接種がまだ進まず、企業債務も増えているため、設備投資の伸びは鈍くなりそうだ。データによると、新興国企業の今年の設備投資は8%増と、欧州や米国を大きく下回るとみられる。
ナティクシスのアジア太平洋地域チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレロ氏は「新興国では明らかに、設備投資の伸びを与信面にかかる制約が抑えることになる。米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和縮小を開始した段階で、その傾向はより鮮明になるだろう」と話した。
アナリストの間では、各企業が政府や投資家から脱炭素化を迫られていることを背景に、再生可能エネルギー関連プロジェクト向け投資も拡大するとの見方が出ている。