FABRIC TOKYO最高執行責任者が語る 既存大手がD2Cに参入しにくい「6つの壁」

三嶋憲一郎 FABRICTOKYO取締役COO兼CFO
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⑥世界観の壁

 既存大手は、経営層やブランド責任者がスタートアップに比べて高齢で、ミレニアル世代、 Z 世代の共感を呼ぶ世界観作りが難しいという壁があります。デジタルネイティブと呼ばれる彼ら(=顧客)に好かれるブランドになるには、すべての社員が同じビジョンを見た上で、それぞれが世界観を表現できなければなりません。これは中長期的に見ると、じわじわとインパクトが出てきます。

組織の変革が必要

 以上を踏まえると、経営者が相当な覚悟と責任感を持って臨まなければ、大手企業の D 2 C による小売の変革には多くの困難を伴います。事業をD2Cに展開していくことは、組織そのものを改革する必要があるからです。しかしだからこそ、大手にとってもWHY(ビジョン)から始めるリテール DX (※デジタル技術をツールにしながら、小売事業への考え方や仕組みの転換をはかっていくこと)の基本に改めて立ち返ってみるのが効果的ではないでしょうか。大手が動くことで、サプライチェーンの川下までその考えが浸透することになるため、業界全体の変革を後押しする力になるのではないかとも思っています。

専門家の知恵を借り、社内にストックする

  D 2 C は、総合格闘技的な要素が強いモデルですビジネスモデルです。自社単独のノウハウだけでは、複雑なバリューチェーンを円滑に運営していくのは難しい。もちろん自社ですべてを賄えば、それだけで競争優位性を持つことになりますが、組織運営の力点をそこに置く必要はありません。自社にノウハウが貯まる形にしておけば良いのです。社会における多様な知見を社内にストックし、アセットとしてノウハウを貯めることをお勧めします。

 FABRIC TOKYOも様々な社外の専門家を活用してきました。デザイン会社、マーケティングコンサル会社、広告代理店、繊維のもの作りアドバイザー、 縫製工場経営者、営業コンサルなどなど。 D 2 C をやっていると必ず、バリューチェーンのどこかで課題が出てきて、自社で解決できなくなることがあります。世の中には必ず、その解題を解決できる分野のスペシャリストが存在します。彼らの力を惜しみなく活用すべきでしょう。そういったネットワークを作ることも、 D 2 C の組織を強くする秘訣と言えます。 

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