少子化時代でも市場は堅調! 子育て世代をサポートする「ベビーテック」最新動向

リテールライター:崔順踊
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2022年に厚生労働省が発表した国内の出生数は対前年比5.1%減、80万人割れの79万9728万人であった。少子化のペースは年々進んではいるが、裏を返せば約80万人の赤ちゃんの誕生があり、赤ちゃんたちを生み育てる大人たちがその1人~数倍登場するということでもある。
女性の社会進出が進み、子育てをしながら仕事をすることが当たり前になった昨今、育休を取得する男性比率が上昇しているとはいえ、母親や赤ちゃんや子供の命を守りケアする養育者達にかかる心身的な負担は大きい。
これら妊娠・出産・育児期において子供およびその養育者を主軸に、テクノロジーの力によって保育や育児の負荷軽減や効果を促進するのが「ベビーテック」である。ベビーテックとは「ベビー(赤ちゃん)+テック(技術)」の造語で、その中身はITシステムやデバイス、オンライン・オフラインサービスなど多岐にわたる。本稿では、国内でも盛り上がりを見せ始めているベビーテックの市場動向、注目製品などを紹介する。

GeorgeRudy/iStock

成長が期待されるベビーテック市場

 ベビーテックは2016年に、米国ネバダ州ラスベガスにて年に1度開催されるCES(Consumer Electronics Show、世界最大級の電子機器・テクノロジーの見本市)で紹介されて以降、注目を集め商品およびサービス展開が拡大し、着実に成長市場となっている。

 フォーブスが2019年に推定した米国における市場規模は約460億ドルとされている。また、米国の市場調査会社Absolute Markets Insightsによると、世界のベビーテック市場は2021年に1972億3000万ドルであり、2022年から2030年に渡り推定CAGAR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)が8.9%と評価されている。

 また、矢野経済研究所の発表によれば、国内は出生数の減少が加速度的に進んではいるものの、2021年におけるベビー用品および関連サービスの市場規模は対前年比0.9%増の4兆3513億円となっている。2022年、2023年も微増が予測されており、2023年には4兆4268億円と見込まれている。

 成長の要因としては、働きながら子育てをする女性が増加していること、デジタルネイティブとも言われるミレニアル世代やZ世代が子を持つ親となり、テクノロジーを導入することに寛容である、また共稼ぎなどにより家計の収入が高い親が増えたことなどが挙げられる。

 「ベビーテック」はその名称からも赤ちゃんを対象とした製品や技術と捉えられがちであるが、その対象範囲は広い。妊活から妊娠・出産・産後・保育や育児というプロセスを中心とし、その製品やサービス・テクノロジーは高齢者にまで応用できる。さながら「ゆりかごから墓場まで」サポートできる可能性を秘めているのだ。

政府もベビーテック市場拡大を後押し

 国内ではベビーテックという言葉がまだ一般的に浸透はしていないが、体調管理アプリの使用やモニターカメラ、保育施設での登降園管理システムなど、さまざまな製品やサービスに触れた経験のある方は多いだろう。

 国内では2018年よりベビーテック製品を扱う一部企業により「子育Tech委員会」が発足されテクノロジーの活用による家事や育児の効率化と、ゆとりある子育て環境の構築を目指している。また、内閣府でも2019年度の「子育て応援コンソーシアム」においてベビーテック製品の発表がされている。

 小田原市では経済産業省のバックアップのもと、ファーストアセント(東京都)の開発したスマートベッドライト「ainenne(あいねんね)」を用いて2022年1月より実証実験を開始。日々の寝かしつけ記録、夜泣きの情報、推奨起床時間の予測、泣き声解析機能などが搭載されている同製品によって乳児の睡眠リズム形成のサポートおよび育児ストレスの軽減に対する効果を検証している。

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