小売企業のスマホアプリをたくさん作って運用したからわかった 小売企業・メーカーがこれから取り組むべきマーケティングとは

2020/03/15 08:56

株式会社日本アクセス 商品統括・マーケティング管掌付特命担当 望月洋志氏

テクノロジーだけでなく、クリエイティブも大切

なぜ小売業はアプリを作るべきなのか

 現在の多くのスーパーのスマホアプリの利用率は、どれだけお金をかけて作っても会員全体の10〜20%のケースが多い。

 だからと言って、アプリを作るのは無駄だと断言するのは早計だ。アプリ会員の月間の購入金額を比較すると、導入前に比べ14%アップしているというデータがある。アプリを使う人を20%と仮定したとき、20%の顧客の売上が14%上がれば、年商は2.8% 増。年商のレベルで見れば、アプリ導入の価値は大きい。

 重要なのは利用率ではなく、アプリを使ってもらって購買衝動を起こすことだ。商品価値が伝わらなければ、いくらクーポンを出したところで消費者は買ってくれない。

 アプリを通じて行うべきことは、商品価値を伝えること。たとえばPB開発秘話を紹介したり、おいしさの秘密を解き明かしたりといったことが非常に重要だ。こちらが情報を発信すると顧客の意識も変わっていく。事実、クーポンなしで買い上げ率を平均で10倍にすることに成功した事例もある。

 母数は、会員でかつアプリの利用者かつそのニュースに接触した人…と、かなり小さい。しかし、買いたいと思っていなかったお客様に買いたくなっていただくことができるアプリの力は大きい。「商品の価値を伝えることができれば商品は売れる」というシンプルな事実が証明された事例ではないだろうか。

 クーポンをつけたりチラシが見えたりするのは、アプリの機能のひとつに過ぎない。アプリで大切なのはテクノロジーだけではなく、商品の持っている価値をどのように編集して見せるのかというクリエイティブの力である。

 商品価値を伝えることが重要だという認識はみんな持っているだろう。しかし、アプリになった途端にそこを追求しなくなるケースが多い。アプリは、店舗を作るように作成すべきなのだ。

施策見直しとデジタル人材確保の必要性

 もちろんデジタルであるかぎり、顧客の動きをデータで追えるというメリットがある。会員カードの番号でログインしてもらえれば、顧客がどのニュースを見たか、チラシを見たか、という行動ログが取ることができる。さらにポイントカードと紐付ければアプリ接触後に何を購入したのか分析することもできる。

 売場を科学することで、ファクトデータとエビデンスに基づいたサービスを創造できるのだ。

 ただし、アプリも万能ではない。顧客の大半に使われていないことは大きな課題だ。だからこそ、アプリでの成功体験を売場に逆輸入することで、効果を拡大することが求められる。

 今後、人口が減少していく中で、何もしなければ売上が下がるのは間違いない。減少した売上に占める固定費の負担が重くなりさまざまなコストカットを行わざるを得ない小売も出てくるだろう。そんな時代に買い上げ率を上げるためには、お客様の意識を変えるための工夫が必須。今からデジタル導入を検討するべきだ。

 その原資として、たとえば折込チラシに投下している広告費を使うという手がある。2000年から2020年にかけて、新聞の発行部数は3割も減少している。しかし、折込広告の予算を3割削減した小売業は少ない。戦略上必ずしもチラシ予算の再配分が最優先とは言い切れないが、広告予算を再配分するだけで、一部のデジタル施策は可能だ。

 効率良くデジタル施策を行うためには、デジタル人材の確保がマストとなる。本来、ビックデータに溢れる小売業はデジタル・マーケターにとって興味深い職場だ。一方で優秀なデジタル人材は他業種でも重宝され、人件費が高い。今後は経営陣のデジタル人材確保に向けた投資判断が重要になってくるだろう。

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