DCMが島忠買収でホームセンター業界が玉突き業界再編か? 問われるスケールメリットの顕在化
椎名則夫(アナリスト)
LIXILビバに続き島忠が次のターゲットに

次の動きは9月18日に報道され、10月2日に両社によって行われた記者会見により、正式に発表されたDCMホールディングスによる島忠への株式公開買い付けだ。
DCMサイドが買収を経営の選択肢にしていることは驚くことではない。同社はそもそもカーマ(現DCMカーマ)、ダイキ(現DCMダイキ)、ホーマック(現DCMホーマック)を束ねた形で2006年9月に発足しており、その後も店舗買収・企業買収を継続してきたM&Aに親和性のある企業である。手薄な関東圏をケーヨーとの資本業務提携で補完したがまだ不十分との認識であることは想像に難くない。
筆者が驚いたのはむしろ島忠側だ。岡野恭明現社長は2017年11月に社長に就任したばかり。社長就任一年後の2018年10月に2021年8月期までの「中期経営計画 2021」を発表し、現在はまさに中期計画の仕上げの時期だ。それと同時に現在は次期中期計画の策定を本格化するタイミングでもあるだけに、DCMとの連携に活路を見出す選択肢を検討していること自体大変示唆に富むと思う。
島忠の場合、業態の開発とさらなる都心シフト、プライベートブランド(PB)の開発が当面の重要施策だと考えられる。仮にDCMとの連携を進めることになった場合、島忠のこうした重点施策がどれだけ強化されるのかが問われるであろう。そしてDCMがホームセンター事業会社を統一する動きにあるなか、島忠もその中に一気にとりこまれるのかにも注目ポイントだ。
トップを走るカインズへの挑戦状
ちなみに現在の業界トップは非公開企業のカインズ。売上高(ないし営業収入)は直近通期で4410億円の模様だ。これを追うのがDCMホールディングスの4373億円、コーナン商事の3746億円、コメリの3485億円である。
では今回の再編劇はこの売上高ランキングにどのような変動をもたらすのか。アークランドサカモトとLIXILビバを単純合計すると3095億円(外食事業を除くと2762億円)となりコメリに続く規模になる。彼らは10年後には空白エリアへの出店とEC・海外展開でこれを5000億円にする青写真を描いている。一方、DCMホールディングスと島忠の単純合算は5909億円で、カインズをかわして統合直後から売上高でトップに立つことになる。
では、玉突き再編を考えない経営者はいるのだろうか?もちろん、各社は売上高の規模競争が目的で再編に走っているわけではない。底流にあるのは、エリア補完ができる相手と組みながら、PB開発推進などの商品戦略の強化、新規フォーマットの模索、あるいは営業経費の最適化を進めることで収益力を高め、ホームセンター他社にとどまらずドラッグストアやEC事業者との競合にも備えること、財務体力を高めて出店による内部成長力を底上げすることにあると見たい。
規模拡大が収益力強化につながるのであれば、規模格差は収益力格差につながることになる。今回の一連の業界再編の動きをまったく気にしない経営者は少数派ではないか。関西・関東を中心に展開するコーナン商事や九州を基盤とするナフコは、地域補完の考え方でM&Aを志向するのか、全国展開を進めたコメリはどう構えるのか、関東で大型店を構えるジョイフル本田は独自路線を貫くのかに筆者は注目したい。
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