与えられる情報は同じでも… スクープをモノにできる記者とそうでない記者の違い
タマゴの故事が教える、記者の心構え
入社以来、「記者というのは敏感でなければならない」と教えられてきた。
時は1989年――。秀和(2005年に私的整理)が忠実屋(消滅)といなげや(東京都)の株式を大量に取得し、両社に対して合併を迫るという出来事があった。
しかし翌90年に金利が急激に上昇、不動産業への銀行の融資規制、米国不動産不況などが重なり、秀和の資金繰りは、みるみる悪化してしまう。
そんななか、「2社の株式を担保に融資をした流通企業がある」という噂が流れた。
流通業界内は騒然。融資した再編の主役は、ダイエーの中内功氏かセゾングループの堤清二氏か、イトーヨーカ堂の伊藤雅俊氏か、はたまたジャスコの岡田卓也氏か?
“黒幕”探しのスクープ合戦の号砲が鳴った。
一方の話題の人物、秀和の小林茂社長(当時)は、記者のぶら下がり取材を受ける中で、タマゴを使ったたとえ話をした。小林社長のこれまでの足跡を考えれば、多くの記者が違和感を持った。けれども、違和感の理由が分からない。
しかし、この時、「バックにいるのはダイエー中内さんだ!」と即座に確信した記者がいた。
当時の中内功さんは、何かにつけタマゴを使った話をしていたからだ(ちなみにイトーヨーカ堂の伊藤雅俊さんは、衣料品での譬えが多かった)。
はたして、その記者の予想通り、90年12月7日に忠実屋の2800万株を担保に700億円を融資していることを発表したのはダイエーだった――。
この故事を引き合いに、ある事柄に敏感に反応して推測することは記者にとってとても大事だ、と駆け出しの頃から教えられてきた。
しかしながら、なかなかそううまくはいかないもので…。