セブン&アイVSイオン 「時価総額」から読み解く実力と今後

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収益性はどちらに軍配が…

  まず「稼ぐ力」収益性は、セブン&アイに軍配が上がる。

 収益性を測る目安としておすすめしたいのが、売上高営業利益率だ。同じ売上高だとしても、原価を削って粗利益を増やし、オペレーション効率を上げて販管費を抑えれば営業利益は増える。

 結果は、イオンの営業利益率が2.00%(2022年2月期)なのに対しセブン&アイの営業利益率は4.44%(同)と倍以上差が開いた。なおセブン&アイの実績は、小売業平均2.8%(経産省調べ)も大きく上回る。

セブン&アイはなぜ稼ぐ力が強いのか?セグメント別の業績を見ると、祖業イトーヨーカ堂を核とし現在も売上高の2割を占めるスーパーストア事業の営業利益率は1.03%にすぎない。

 稼いでいるのはコンビニエンスストアのセブンイレブンだ。売上の1割を占める国内コンビニ事業は、営業利益率は25.58%と驚異的だ。全社営業利益3876億円のうち2233億円、実に6割近くを国内コンビニ事業が稼いでいる。 

 一方、イオンの収益構造はどうか。イオンリテールなどのGMS(総合スーパー)事業とマックスバリュを中心とするSM(スーパーマーケット)事業の売上高は全体の6割を超える56967億円に達し、セブン&アイのスーパーストア(18107憶円)の3倍以上に相当する。

 だが、その収益力は弱い。GMSのセグメント利益はわずかながら赤字で、SM事業の利益率も1.2%と低水準だ。売上の1割強を占めるヘルス&ウエルネス事業(ウエルシアホールディングスなど)が利益率4.06%と健闘するものの趨勢をひっくり返すまでには至らない。

 つまり、イオンとセブン&アイでGMS・SMの稼ぐ力に大きな差はない。セブン&アイの稼ぎ頭はコンビニで、20%超えの収益率がグループ全体をけん引する。一方、セブン&アイにないイオンの強みの1つは他のフォーマットよりも成長著しいドラッグストアであるものの、その収益性ではコンビニに敵わない状況だ。

イオンの成長性を支えるのは

  では、成長性はどうだろうか。イオンは、2010年から2020年までの10年間で売上高を1.69倍に増やしている。CAGRCompound Average Growth Rate:年平均成長率)は5.3%に達する。10年間増収を続け、とくに20142月期からの3年間は連続で2ケタ増収をたたき出した。同じ期間におけるセブン&アイのCAGR2.6%だから、大きく水をあけている。大型ショッピングセンター(イオンモール)の国内外への積極的な出店とそれに伴うGMSの出店や、ドラッグストア事業の成長といった業態戦略と金融事業の拡大がけん引力となった。

 ところが「成長性」に関する両社の状況は、2021年におけるセブン&アイの米国スピードウェイ社(コンビニ事業)買収により一転する。2021年~2022年の2年間でセブン&アイの売上は倍増した。グロスの売上高は2022年2月期にイオンをわずかながら抜き、20232月期はその差を拡げる見通しだ。

 こうしたなかイオンは、コロナが収束をみせたことにより、デベロッパー事業の大きな回復が見込めるほか、ドラッグストア事業のさらなる拡大、アジアシフトの加速、国内でのネットスーパー事業の急拡大などで成長戦略を進めていく。

  またセブン&アイは、3月以降、西武・そごうの百貨店事業を米国系ファンドのフォートレスに売却する予定だ。この事業譲渡が、さらなる時価総額向上につながるのか、イオンに逆転の秘策があるのか、今後に注目したい。

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