倉林武也のインサイト入門④つい買ってしまう!ショッパーインサイトから新しい商品や売上をつくる方法

2021/10/18 07:00
    倉林 武也
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    ウェブサイトで手土産を選ぶときのインサイト

     次はウェブサイトにおける展開から見ることにする。皆さんがウェブサイトで買い物をするのは、どの様な商品や場面だろうか?急ぎの買い物や消耗品の補充、書籍など、実店舗で買うこともあればネットを利用して「衝動的」にマウスをクリックすることも想像できる。ウェブサイトでの販売を運営する企業においては、こうした「ネットで購入される商品とその訴求の仕方」は、売上や顧客をつくる上では最も重要なテーマになる。

     では、そのウェブサイトで「手土産」を購入してもらうためのショッパーのインサイトを活用した事例を見てみよう。

     写真②のカルピスの希釈用2本セットは、楽しそうなサーカスのデザインを施してネットで販売されていたもの。スーパーなどで販売されている通常のデザインのものに比べて価格はやや高い。だが、小さなお子さんのいる家庭へのギフトやお祝いの品と考えると、絵本の様なパッケージに愛らしいカルピスボトルが入っており、わざわざ店で悩んで選ぶよりも、このサイトで決めてしまう方が楽と思う人が多いことだろう。

     つまり、スーパーなどで販売されている商品も、パッケージや伝え方を工夫することで贈られた家族の笑顔が期待できる商品に変わる。これも、商品を選ぶウェブサイトという「場」と、そのインサイトを捉えたことで売上につなげた好例といえる。

    カルピスの希釈用2本セット
    写真② スーパーマーケットなどで販売されている商品を、ウェブサイトを見て商品を選ぶ人のインサイトを捉え、「贈られた家族の喜ぶ顔が見たい」を包装や伝え方に表したギフトに昇華。

    本屋さんで本を選ぶ時のインサイト

     最後の事例の紹介は、印刷会社に勤めながら週末に家業の本屋を手伝う方が取り組んだ企画。出版不況で全国の書店数が減少する時代に、本屋で本を購入する人のインサイトを捉えて展開したのが、「オリジナルブックカバー」による取り組みだ(写真③)※。
    ※オリジナルブックカバーを使って、全国の書店を盛り上げたいとクラウドファンディングを実施

     クリームソーダ、アイスバー、焼き芋、フランスパン、富士山などをデザインしたブックカバーを、店頭で文庫本の購入者に無料で配る取り組みを始めた。EC化が進む中で、最も影響を受けたのが実店舗である本屋。その本屋で思わず購入したくなる心のスイッチを押したのが、このオリジナルブックカバーだ。

     既に多くのメディアでも取り上げられるこの取り組みは、向かい風の中にある本屋(実店舗)という「場」において、何が買い物客のインサイトを掴み、買い物の行動につなげるかを考えるヒントになる。

     この様にショッパーインサイトを掘り下げる際に、単に買い物客の気持ちや意識を捉えるだけでなく、その「場」の与える影響を重視する。

     出張をするサラリーマンであれば「駅の土産物コーナー」、ウェブサイトで買い物を選ぶのであれば「実店舗での買い物との比較」、本屋さんに来た買い物客であれば「そこで選ぶ理由」。買い物をする人の気持ちの中にあるものと、その「場」で生まれるものを、掛け合わせて考える必要がある。

    オリジナルブックカバー
    写真③ 今やオンラインで購入する商品の代表とも言える書籍。書店で思わず買いたいと思うスイッチを入れる仕組みをオリジナルブックカバーで実現。
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