グローバルSPAと真逆の理由でSDGsを強化するスーパーブランド、その隠された高収益の真実

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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 話はややそれるが、米国GAFAMなども同様、Facebookは幾度もデータ漏洩や活用について問題を起こし、米司法省のやり玉にあげられているが、Appleは一貫してプライバシー保護を主張し、リサイクルや買取、二次流通など、私が何年も前からアパレルでも導入せよ、ということをやっている。こうした動きから価格競争に陥っているスマホの中でiPhoneだけが高価格を維持し日本でも高いシェアを維持している。

 ユニクロの最近のテレビCMをみても、一昔前の世界同一CMのようなグローバルトーンから、いつしか、サザンの曲が流れた身近なイメージを私たちに植え付けようとしているようにみえる。私はAppleのやりかたの方が潔いと感じるが、ようは、経営学でいう「コストリーダシップポジション」をとるユニクロ、ZARAなどのガリバー企業は、その巨大さゆえに社会的責任が重大となり、ハイブランドによるSDGs対応とは別の意味で、まわりからSDGs対応を求められるわけだ。

 ハイブランドが、マーケティング的観点からの対応とするなら、コストリーダーシップであるグローバルSPAは、むしろ必要に迫られ、いや、もっと受動的な意味でいえば、その社会的責任が巨大であるがゆえにSDGs対応が必要となってくる。両社は全く別なのである。

モノマネの先には破滅しかない中間価格帯企業

 問題は、中間価格帯のアパレルだ。このセグメントは、ある意味、社会活動に回せるほど潤沢なブランド維持費用があるわけでもなく、また、社会的責任のやり玉にバイネームで挙げられることもない。某セレクトショップ社長が、「我々は、同じトップスを1000円で売る企業、そして、10万円で売る企業に囲まれ、1万円で売らねばならない」(これは相当難易度が高い)といっていたのが印象的だ。ようはメリハリがないのである。

 社会がとがった人達による構成になってくると、いわゆる勝ち組と負け組の明暗差が、消費者も企業でもハッキリする。結果、超ロープライスか超ハイプライスかの二択に分かれるというのが私の分析だ。冒頭でいい加減な調査を紙幅をとったのは、こうした調査とおぼしきものに、単に数字です、という理由だけで、そもそもの調査設計がいい加減なものを盲信し、製品・市場(顧客)の関係を見ずに対応をあやまると、痛い目にあうということが言いたいわけだ。

絶対にコストと利益を公開しないトップ・メゾン

 ここからはベールに包まれたスーパーブランドの驚くべき収益性の高いビジネスについて解説したい。世界的メゾンブランドの仕事をしていると、奇妙なことを感じることが多い。彼らの会社に入ると、半数以上が外国人で社内はほとんど英語でコミュニケーションがなされている。日本の「ベタ」な仕事のやり方を知っている私は、外国人に日本の仕事ができるのか、といつも不思議に思っていたが、そのカラクリがようやくわかったことがある。

 まず、彼らは、守秘契約を結んでも、売上は教えてくれるがコスト・利益は絶対におしえてくれない。企業再建をやり、常に企業価値をEBITDA (税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益) で考える私は、すぐさま「在庫はどうなっているのか」と聞き直したところ、彼らは「LDP: Landed duty paid 日本に輸入された後の簿価」に、帰りの飛行機代も含め、Ship back (返品) するという。つまり、日本法人は売れようが売れまいが、余剰在庫はゼロである

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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