アパレルビジネスにおける実践的なAI活用3パターンと生成AIの活用術とは

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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AIMD策定の一助としては、極めて有効

JohnDWilliams/istock
写真はイメージです(JohnDWilliams/istock)

 それでは、AIをつかったMDは全く使えないのだろうか。私は使い方次第では可能だと考えている。

 まず、AIの画像認識技術を使い、店舗が入っている館の通行量調査を行い、年代、色、着こなしなどの傾向を見る。アパレルの人間であれば、具体的なMDを組み立てる前に、街を見て、店を見て、商品を見て今年の流行を予想する。AIを使った需要予測は、こうして組織内に醸成されるトレンドの客観化、共有化に役に立つ。例えば、私はかつて毎年イタリアにトレンド調査にいってきたのだが、デザイナーと意見がいつも異なっていた。要は、同じものを見ても見る人が違えば、意味合いも異なってくるということなのだ。

 AIによる需要予測は、組織の中のトレンドセッターに関係ある人間が外界を見てトレンドを読み取った結果がAIによって数字やヒートマップ上で現れることになる。だから、ここで外界のトレンドを客観化し、また、組織の中で異なる意見を持つ人間を減らすことができる。

 こうすれば、組織の中の人の感性のバラツキがなくなっていく。つまり、スペインのZARAが、MD構築の際の参考情報としてMD構築作業の前段階に人力で行っている「トレンドの把握」を、AIを活用して行おうというわけだ

 MDには直接役に立たないが、その前段階の参考情報としては大いに役立つ。したがって、論点一MDへの応用については、ZARA型売り切りモデルの初期計画の参考情報としてAIの分析結果を使うわけだ。

大量のデータを掴みマーケティングに応用

 次に、AIの分析が役に立つのは、「個客の買い回りビッグデータ」であろう。 

 データには年齢や住所、性別など動かない静態的データと、お店の中でAという商品とBという商品を買うなど、動態的データの二つがある。従来のデータ分析とは上記の静態的データを使って、個客属性を分析するキーにして「年齢は?」「どこに住んでいるか?」などをマーケティングデータにしてきた。

 しかし、本当にクロスセルやアップセル(併売をしたり、より高額な商品を買ってもらう)を誘発するためには、個人を主キーとして、動態的データを集め、また、そのビッグデータの中身を「意味のある塊」に分類する必要がある。

 そのような分析をすることで、例えば「ワインを買う人は高級なメンズシューズを買う確率が高い」など、個客の買い回り属性や、思いも寄らぬ購買行動が分析できるわけだ。

 したがって、二つ目の活用方法は、「個客の動態的購買データを、AIを使って分析し個客の購買行動をより深く分析する」ということである。

 

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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