忍び寄る登録販売者「不要論」 新資格に突き付けられた最大の危機とは

玉田慎二(医薬コラムニスト/ジャーナリスト)
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登販の存在意義が相当程度薄れる方向に

 2023年2月からスタートした販売制度検は、すでに10回の議論を終え年内の取りまとめに向け最終盤に差し掛かっている。そのなかで「デジタル技術を活用した医薬品販売業のあり方」は、登販などの専門家が常駐しない「受渡店舗」を新設。この店の“親店舗”と位置付ける、専門家常駐の「管理店舗」が情報提供などを担い、受渡店舗を遠隔管理するというのが制度改正の骨格だ。

 受渡店舗は生活者にOTCを直接手渡すことだけに専念するため、登販などの専門家ではない従業員や「必要なシステム上の要件を満たす販売機」でも可能とする。大正製薬(東京都)が試験的に昨夏実施した「OTC自販機」による販売も想定される。

 また受渡店舗は、第1類のOTCも取り扱うことができる。もちろん、保管管理体制の整備と受渡手順書や記録の作成などの要件は課される。「管理店舗」の専門家が管轄できる受渡店舗数は「数店舗程度の上限」を設け、さらに「同一都道府県内」に限定する方向だ。ただし「同一法人に限る必要はない」と、必ずしも同じ会社による統括を強要しない。管理店舗は、実際に薬局や店舗販売業として「実地で販売を行うもの」とする方針が固まっている。

 こうした縛りは、規制緩和推進派のコンビニエンスストア側が窺う、本部の一室に専門家を集め、全国津々浦々に所在する店舗を一括で受渡店舗に指定し、効率よく、低コストで、大規模にOTC販売を行うといった“究極”の規制緩和を阻止する狙いも透けて見える。

 当然、規制改革推進会議ワーキンググループは11月17日の会合で、販売制度検が規定する縛りにことごとく反発。所管する河野太郎大臣も「デジタル技術の利点を潰している」と発言し、厚労省に再考を求めている。

 ただし、賛否ある制度設計に関して、販売制度検がどこまで踏み込んだ報告書をまとめるか──。「両論併記」といった玉虫色の報告に落ち着く部分もでてくるかもしれない。しかしどちらに転んでも、登販の存在意義が相当程度薄れる方向にあるのは間違いない。ではなぜ、販売制度検の議論がこうまで登販「不要論」を醸し出しているのか──。そこには“大人の事情”が見え隠れする。(つづく)

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