イオンGMS復活の命運を握る「そよら」、非食品復権のカギはあのホームセンター?

中井 彰人 (nakaja lab代表取締役/流通アナリスト)
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カインズはGMS上層階の救世主となるか

 そんなカインズにとって大きな課題は、「大都市周辺に出店できる店舗フォーマットがない」ということだった。「そよら」への出店は、カインズにおける大都市圏シェアアップの成功モデルとなる可能性を秘めているのである。

 近年、イオンのGMS事業は業績不振が続いていたが、「そよら」が一定の成果を残すことができれば、既存GMSを一気に転換していくことになるだろう。とくに大型店の2、3階の売場を埋めるために、カインズの誘致が有効であることはすでに認識されているはずだ。カインズが「GMS上層階の活性化のパートナー」と認識されれば、カインズの出店フロンティアが生み出されたということにもなるだろう。

 そよら湘南茅ケ崎そ見る限り、カインズの品揃えは都市生活者のニーズに合わせて修正がなされており、都市周辺部の家回りニーズにかなり合致しているように思われる。地方の広い庭のある大きな家とは異なり、庭の狭い小さめの戸建てやマンション暮らしも多い都市部では、家の「外回り」(エクステリア、園芸、外壁など)のニーズは小さくなる。

1階フードコートのキッズコーナー
そよら湘南茅ヶ崎

 そのため、大型店の売場構成からそれらのジャンルを減らして、売場スペースを適正化し、家の「内回り」(インテリア雑貨、生活雑貨、など)はそのままにカインズの商品力が伝わるつくりになっている。これまでカインズを知らなかった消費者にも十分アピールすることは間違いあるまい。

 当家の家人はカインズの品揃えが最もお気に入りで、「近隣に店舗がないので行けない」と言っていたが、茅ヶ崎に最新鋭の店ができたことをとても喜んでいた。今後、都市部にもカインズの店が増えてくれば、その支持者は確実に増えていくだろう。

 今後、都市部の家回りニーズは、高い商品力を持つカインズとそのライバルのニトリ(デコホーム)が競い合いながらシェアを獲得していく可能性が高い。これまで都市部で圧倒的な存在感を誇っていた「無印良品」も、安穏としてはいられなくなるかもしれない。

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記事執筆者

中井 彰人 / 株式会社nakaja lab nakaja lab代表取締役/流通アナリスト
みずほ銀行産業調査部シニアアナリスト(12年間)を経て、2016年より流通アナリストとして独立。 2018年3月、株式会社nakaja labを設立、代表取締役に就任、コンサル、執筆、講演等で活動中。 2020年9月Yahoo!ニュース公式コメンテーター就任(2022年よりオーサー兼任)。 2021年8月、技術評論社より著書「図解即戦力 小売業界」発刊。現在、DCSオンライン他、月刊連載4本、及び、マスコミへの知見提供を実施中。起業支援、地方創生支援もライフワークとしている。

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