イオンGMS復活の命運を握る「そよら」、非食品復権のカギはあのホームセンター?

中井 彰人 (nakaja lab代表取締役/流通アナリスト)
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「そよら」がGMSの課題を解決する?

 しかし、今は子育て期女性の就労率は上昇し、免許取得率の男女差もなくなったため、平日は会社帰りに生活必需品(食品、生活雑貨、化粧品など)の買物を済ませ、休日はターミナル駅や郊外にある非日常的な大型商業施設で家族の時間を過ごす、というスタイルが増えてきた。古いタイプのGMSは“どっちつかず”の中途半端な存在とみなされるようになり、GMS企業は業績不振に悩まされるようになっていった。こうしたGMSの課題に対して、「そよら」のような「生活必需品に絞り込んだワンストップ」というのが、イオンが出した一つの答えなのであろう。

 前述のとおり、そよらでは、かつてのGMSの直営売場を「フード&ドラッグ」という生活必需品に絞り込み、それ以外の生活雑貨、衣料品、耐久消費財、サービスなどのジャンルを、イオングループ企業を含めた専門店テナントに任せている。1階こそ、核店舗であるイオンスタイルの直営売場が大半を占めるが、2階以上は競争力の高い専門店チェーンに割り切って渡している。都市圏のGMSは購買頻度の高い「フード&ドラッグ」に特化していくという今後の方向性をうかがわせる売場構成となっているのだ。

 今後、大都市郊外にあるイオングループのGMSは、「そよら」タイプにリニューアルしていくことで、不採算となっていた2階より上の売場を活性化していくことが可能になるかもしれない。

CAINZそよら湘南茅ケ崎アイキャッチ

“絶対王者”カインズの存在

 実は、「そよら湘南茅ケ崎」でもうひとつ注目していることがある。それは、ホームセンターの「カインズ」が出店しているという点だ。

 地方や郊外のショッピングモール内にホームセンターが出店していることは珍しくないが、地方・郊外立地に大型店(平均売場面積約7200㎡)を展開することで知られるカインズ(埼玉県)が、傘下となった「ハンズ」(業態は小型専門店の「ハンズビー」)とともに出店したのである。

 そよら湘南茅ヶ崎内に出店した店舗は売場面積約5000㎡と、同社としては小ぶりだが(それでもホームセンター業界平均とされる約4000㎡より大きいのだが……)、これこそ、カインズの大都市攻略作戦の新たな突破口ではないかと筆者は考えている。

 ホームセンター業界において、カインズは“絶対王者”ともいえる存在で、地方のロードサイドに大型店を展開することで着実に成長してきた。現在、業界2位のDCMホールディングス(東京都)は、ホーマック(現DCM:以下、同)、カーマ、ダイキの3社が経営統合して誕生した企業で、一時期はホームセンター業界の売上トップを奪取していた時期もあったが、カインズは大きなM&Aをすることなく、自前の成長でDCMホールディングスを抜き返している。

 人気漫画キングダムでいえば、DCMが「合従軍」、カインズが「秦」といったイメージであろうか。店舗に行ったことがある人ならわかるが、カインズ競争力の源泉は、製造小売業としての完成度の高さにある。家具・インテリア雑貨で製造小売業といえばニトリ(北海道)だが、カインズオリジナルの家回り雑貨の商品力はニトリを脅かす水準に達していると言っていい。

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記事執筆者

中井 彰人 / 株式会社nakaja lab nakaja lab代表取締役/流通アナリスト
みずほ銀行産業調査部シニアアナリスト(12年間)を経て、2016年より流通アナリストとして独立。 2018年3月、株式会社nakaja labを設立、代表取締役に就任、コンサル、執筆、講演等で活動中。 2020年9月Yahoo!ニュース公式コメンテーター就任(2022年よりオーサー兼任)。 2021年8月、技術評論社より著書「図解即戦力 小売業界」発刊。現在、DCSオンライン他、月刊連載4本、及び、マスコミへの知見提供を実施中。起業支援、地方創生支援もライフワークとしている。

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