「食の提案」で難局を乗り切る=ジョイス代表取締役兼社長執行役員 小苅米秀樹

聞き手:千田 直哉 (編集局 局長)
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 三関店の開業に当たって、あらためて米国を視察してきました。米国小売業はウォルマートの“独り勝ち”と言われて久しいですが、確かに市場占有率だけを見ればそれは正しいかもしれません。しかし、ウォルマートと隣接しながら、一歩も引いていないローカルチェーンが数多く存在することも事実です。そしてそのキーワードは「価値訴求型」だと考え、当社もそれを実践しようということを打ち出したわけです。

 ただ「価値訴求型」という言葉は、少し理解しにくい部分もありましたので、「食の提案型スーパーマーケット」と言い換えるようにしています。

意識改革からスタートさせる

──「食の提案型スーパーマーケット」の1号店を開業するに当たっては、何から着手したのですか?

「食の提案スーパーマーケット」1号店 ジョイス三関店外観「食の提案スーパーマーケット」1号店 ジョイス三関店外観

小苅米 従業員の皆さんに、意識を変えていただくことをまず行いました。とくに三関店の場合は、後ろの駐車場に建て替えた店舗ですから、従業員の皆さんは以前から働いていただいている方々が大半でした。しかし、新しいコンセプトの店舗が開業するのですから、その店舗風土を変える必要がありました。三関店はこれまでとまったく異なる考え方の店舗であることを店長がマンツーマンでお話しし、納得してもらいました。たとえば、「フレンドリーあいさつ」をなぜする必要があるのか、というようなことですね。

 〈お客さまとの対話の機会が増えれば、不便や不満な点を教えてもらうことができ、次の商品開発や販売方法の改善につながる。お客さまも気持ちよく接客をされれば、「またあそこに行きたい」ということになる〉。

 そんなことを、縷々(るる)、納得いくまで説明するのです。それは大変な労力ですが、それを繰り返してきました。

 昔は商店街に「八百屋さん」「魚屋さん」「肉屋さん」があって、目の前で切ったり焼いたりしてくれたものです。「これ、おいしいの?」と聞けば、「今日のは最高だよ」と説明してくれました。本来の食品小売業はそうした会話や細かな作業が大事であり、ただ商品が置いてあるだけということではないと思うのです。

 まだまだわれわれにはできていませんが、従業員の一人ひとりが自信を持ってお客さまにおすすめできる、そのような店舗になりたいと考えています。“人の力”がやはり大切です。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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