3年で17店の競合が出店、お客様一人ひとりの満足度を高めて勝ち残る=オギノ荻野寛二社長

2012/03/02 19:00
聞き手:下田健司
構成:小木田 泰弘
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──競合店にはどのように対抗してきたのですか。

荻野 当社は、ポイントカードをとおして顧客データを蓄積し、お客さまに「お得意さま」になっていただくことを基本的な戦略にしています。それに磨きをかけ、深化させていくことが競合店対策になると考えています。

 ユニー(愛知県/前村哲路社長)さんが09年4月にモール型ショッピングセンター(SC)「ラザウォーク甲斐双葉」(山梨県甲斐市/核店舗:アピタ双葉店)を開業したときもほとんど影響を受けませんでしたし、マックスバリュ東海(静岡県/寺嶋晋社長)さんが数年前にSM「マックスバリュ」を集中的に出店した際も、1年ほどは影響を受けましたが、今では売上を回復できています。これまではしっかりと戦うことができたと自負しています。

 今後は、マックスバリュ東海さんが11年5月に「マックスバリュ」を業態転換した、DSの「ザ・ビッグ山梨中央店」(山梨県中央市)、そして11年11~12月にオープンした「ザ・ビッグ櫛形店」(山梨県南アルプス市)と「ザ・ビッグ白根店」(同)の影響がどの程度出てくるのか気になるところです。

変化するニーズに合わせる

──DS「ザ・ビッグ」については、どのような対策を考えていますか。

荻野 ナショナルチェーンで、しかもあれだけの「安さ」です。競争相手としてはやはり脅威です。今までのディスカウント志向のSMとは異なるととらえています。

 基本的な部分で、ベーシックアイテムの「安さ」は大きな来店動機になりますから、当社も対応しなければなりません。ただ、野菜やグロサリーの売価を「ザ・ビッグ」さんと同じに設定してしまうと利益を減らしてしまいます。ある程度は値合わせをしなければなりませんが、「価格」という土俵で戦ってしまうと負けてしまいます。

──「価格」以外で勝負するのですね。

荻野 はい。お客さまは「安さ」だけを求めているわけではありません。

 たとえば、「ザ・ビッグ」さんの売場を見ると、相当商品を絞り込んでいる印象を受けます。お客さまが、なんとなく「あのお店に行けば私が欲しいものが何でも揃う」と感じるのと、「あのお店はいつも安いけど、いつも買い忘れがある」と感じるのでは、大きな違いがあります。

 お客さまがそのときに必要としている商品をしっかり売場に並べることが重要です。「給料日前だから今日は安いものが欲しい」「雛祭りだからちょっといいものが欲しい」「節分だから恵方巻が食べたい」など、お客さまの買物の動機、欲しいものはその時々で異なります。それに合わせていくことが、当社の取り得る対抗手段だと考えています。

 お客さまの食のスタイルは、「素材から料理をつくる」「料理には簡便調味料を使う」「ご飯とお味噌汁はつくるが、ほかは総菜で済ます」「料理はまったくしない」など、さまざまあります。そうすると、買物の際の満足度もお客さまによって異なります。素材から料理をする人にとってはレトルト食品は必要ないでしょうし、逆にレトルト食品をメーンに購入する人にとっては、自分のお気に入りや試しに買ってみたくなるような商品が置いてあることがとても重要になります。ですから、お客さま一人ひとりの買物の便利さや満足度を、もっと深掘りしていく必要があります。

 さらに言うと、地域によって食文化も異なります。たとえば、節分の豆の撒き方は、山梨辺りだと豆を1粒ずつバラバラに撒きますが、長野県だと豆は小袋入りの状態で撒いたり、豆以外のお菓子を撒く習慣もあります。

 そういった要素を含めて、お客さまの消費生活をしっかり把握して、エリアそれぞれで商売をしていく。それが私どもにとって大事な仕事だと考えています。

 

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構成

1979年生まれ。2009年6月ダイヤモンド・フリードマン社(現ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」誌の編集・記者を経て、2016年1月から「ダイヤモンド・ドラッグストア」誌副編集長、2020年10から同誌編集長。

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