流通外資の強み(中) イケア

2010/05/31 00:00
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 強い流通外資企業として、もうひとつ取り上げておきたいのは、イケアジャパン(以下、イケア:千葉県/ラース・ペテールソン社長)だ。

 

 イケアを「家具」のSPA(製造小売業)として位置づける向きは、業界内外を問わず支配的だが、イケアは単なる「家具店」ではない。

 

 パーテーションで区切り、部屋を見立てた「ルームセット」と呼ぶスペースをコンセプトに応じてコーディネートし、消費者に新しいホームソリューションの提案をしている。

 

 振り返れば、1970年代に日本でも新しい住生活のムーブメントが起こった。家庭団らんのスペースが「茶の間」から「リビングルーム」に代わり、「ちゃぶ台」が「ダイニングテーブル」に代わった頃だ。

 このムーブメントの主役として勇躍した小売業は百貨店や家具店だった。これを端緒に、日本の住文化は一斉に西欧化にシフトしていくようにも見えたが、そこから30年間は、大きな変化を見せていない。百貨店や家具店で販売する商品が一般の消費者にとって「高嶺の花」だったことが普及を妨げたのだ。

 

 一方、イケアが提案するのは、「手に届く(金額の)ホームソリューション」である。

 

 だから、商品単価は相場よりも圧倒的に安く、消費者の平均買い上げ点数は、10品(小誌調査)にも及ぶ。

 

 しかも、イケア興味深いのは、日本の消費者が、どちらかと言えば、なおざりにしてきた「壁」「床」「窓」への提案をしっかりしていることにある。

 

 例えば、イケアがコーディネートする「ルームセット」の壁には、必ず多くの額や絵、大きな鏡などが掛けられている。部屋にゆとりをもたせ、部屋自体を広く見せる効果があるからだ。また、蛍光灯が主力の日本の家屋に間接照明の心地よさを訴求していることも新しいライフスタイル提案と言ってよいだろう。

 

 今後、イケアでホームファッションやホームファニシングを購入する家庭が増えれば、ベッド、テーブル、チェア、ソファなど家庭内のインフラは大きく変わるはずだ。

 

 それと並行して、グラスやお皿なども変わり、食生活が変わっていくことも想定できる。

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