キリンビール代表取締役社長 松沢幸一
「のどごし〈生〉」「新・一番搾り」「キリン フリー」…連続ヒットの裏側にあるものとは?!

2009/12/09 00:00
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定番強化で「一番搾り」をリニューアル

──商品については、「定番強化」、「健康志向への対応強化」、「総需要拡大」の3つを柱に掲げていますが、この中でいちばん優先順位が高いのは、「定番強化」ですか?

 

松沢 ビジネス的に考えれば、屋台骨をしっかりさせるという意味で定番強化が最優先になります。

 

──そこで、09年3月の「一番搾り」のリニューアルが出てきたということですか?

 

松沢 そうです。しかし、「一番搾り」のリニューアルについては、社内外からは「リスクが大きいのではないか」という声が多かったですね。ちょうど社長就任と 「新・一番搾り」の発売が重なりました。就任直後のマスメディアの取材では、さかんにそのことを聞かれました。しかし、リスクも考えられますが、いろいろ 検証して、そのうえで変えようということになったので、「あくまで信じてやり抜く」と言わせていただきました。

 

 結果的には、コマーシャルに出ていただいているイチロー選手のWBCでの活躍も手伝って、大きなヒットになりました。消費者からも「おいしくなったし、飲みやすい」と多くのお褒めの言葉をいただきました。

 

──ビールは、発泡酒と新ジャンルに押され気味で、市場が縮小していますが、この点はどう見ていますか?

 

松沢 お客さまの節約志向の高まりで、低価格の新ジャンルがすごい勢いで伸びて、これはもう厳然たる事実です。しかし、ビールにはビールならではの味がありま す。「ラガー」や「一番搾り」に対して愛着を持っているお客さまもたくさんいらっしゃいますので、ビールはビールとして今後もしっかり売っていくつもりで す。

 

 一方、新ジャンルの「のどごし〈生〉」は、低価格だから売れているというよりも、さっぱりした味そのものを気に入ってくださるお客さまも多いのです。だから、ジャンルを超えて自分の味として飲んでいただける価格帯を超えた商品づくりをきちんとやっていきます。

 

 そして、3つの柱のうち2番目には、「健康志向への対応強化」です。これは09年2月に発売した発泡酒の「淡麗W」がいい例で、プリン体99% カットを実現しました。ビールテイストが好きでも、健康のために手が出ないという消費者に高く支持されて、固定客が付いています。

新市場を創造した「キリン フリー」

──いちばん興味があるのが3つめの「総需要拡大」ですが、「キリン フリー」(以下、フリー)は、時代のニーズに合わせ、新市場創造を果たしました。

 

松沢 実は、手前味噌ですが、私も「フリー」はたいしたものだと思っているのです。3年ぶりにキリンホールディングスからこちらに来て、すごい商品ができている のに驚きました。「フリー」は当初の年間販売目標は63万ケースでした。しかし、その後3度も上方修正して、350万ケースになりましたが、それも越して しまいそうな勢いです。

 

 「フリー」はもともと飲酒運転根絶の目的で開発しました。すでにノンアルコールビールはあったのですが、0.1%や0.5%のアルコール分があり ました。そのため、消費者からは「本当に飲んで大丈夫なのか」とたびたび問い合わせがあり、「運転するなら飲まないでください」と答えてきました。そんな ことで、市場もなかなか広がりませんでした。

 

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