トラック運転手に残業規制=産業界、消費者も迫られる対応=物流停滞に懸念・24年問題

時事通信社
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大井コンテナ埠頭(ふとう)周辺を走るトラック
〔写真説明〕大井コンテナ埠頭(ふとう)周辺を走るトラック=2023年7月、東京都品川区(時事通信社)

 1日からトラック運転手の時間外労働に年960時間の上限が課される。働き方改革の一環だが、人手不足や物流停滞を招く「2024年問題」が懸念されている。経済活動や生活に不可欠な社会インフラの物流を維持するため、産業界や消費者も対応を迫られる。

 運転手の拘束時間も厳格化され、1人が1日で運べる荷物量や距離が減ることになる。物流シンクタンクのNX総合研究所は、対策を講じなければ24年度に14.2%の輸送力が不足し、30年度には34.1%の荷物が運べなくなると試算する。

 影響が大きいのは遠隔地への輸送だ。人繰り難に燃料費高騰も重なり、地方の運送事業者には長距離輸送撤退の動きも出つつある。特に首都圏向けなどの農産品出荷への支障が憂慮されている。

 産業界からも「納入リードタイム(所要時間)を維持できない恐れがある」(製造業)、「商品配送エリア縮小などサービス低下が心配される」(小売り大手)などの声が上がる。物流費上昇への不安もあり、帝国データバンクが1月に公表した調査結果では、全国約1万1400社の7割が「マイナスの影響がある」と回答した。

 問題解消には、荷主も含めた物流効率化の取り組みが急務だ。運転手の拘束時間の2割を占めるとされる荷待ち・荷役時間の削減のほか、共同配送や中継輸送、デジタル化などが求められる。政府は2月、一定規模以上の荷主や物流企業に効率化の中長期計画策定を義務付ける法案を今通常国会に提出した。施行は2年程度先だが、3000~4000社が対象になる見込みだ。

 人手確保には運賃値上げによる待遇改善も必要だ。ただ、トラック運送業界は中小零細が9割超を占める多重下請け構造で、立場が弱く、荷主や委託元と運賃交渉すらできていない例も少なくない。政府は24年度に業界で10%前後の賃上げを目指すが、実現は不透明だ。

 物流改善には消費者の協力も欠かせない。宅配便の再配達削減のほか、配達所要日数の増加や送料負担の受け入れが課題で、生活習慣や意識の見直しを求められている。 

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