これからの小売業にとって「社内インフルエンサー」の育成が重要となるワケ

望月 智之 (株式会社いつも 取締役副社長)
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社内インフルエンサーは「長期的な売上増」に有利

 当社に入社してくる新卒・中途社員のなかにも、「Instagramのフォロワーが万人います」という人が増えており、私たちも「そのほうがお客さまによい話ができる」ととらえて、重要視しています。とくに当社はECに関わる事業を展開しているため、SNSは切り離せません。ほかのスキルが同じであれば、InstagramYouTubeのフォロワーが多いほうがよいのです。

 これは例えると、少し前の渋谷109のカリスマ店長と性質的には同じなのです。オフラインからECへ、そして今はライブコマースへと、異なるのは商品の売場だけです。

 実際にライブコマースの現場では、中途半端に外部インフルエンサーに依頼するより、しっかりと育成した社内インフルエンサーのほうが着実な売上につながっています。最近では万単位のフォロワーを抱える企業アカウントも多く、「中の人」(=アカウントを運営している社員)がメディアで取り上げられることも増えてきました。一方、著名なインフルエンサーやタレントの活用は、短期的な瞬発力が期待できる一方で、ほとんどが長期的な売上にはつながっていません。

社内インフルエンサーは長期的な売上アップに有効だ
社内インフルエンサーは長期的な売上アップに有効だ

 以前、中堅コスメブランドの社長に「SNSの取り組みはどのような感じですか?」と質問したところ、自社ブランドのInstagram1万人以上フォロワーがいるアカウントを運営しており、「社員にインスタライブをさせたらすごく売れた。それをずっと続けている」と教えていただきました。

 外部のタレントに100万円以上のコストをかけてお願いしても、その瞬間のトラフィックはありますが、やはり「販売」にはあまりつながらないのです。もちろん、認知度アップという意味では別戦略の先行投資として外部の人材を活用することも重要ですが、長期的な利益につなげていくためには、自社独自のチャネルでライブ配信やInstagramを投稿したほうが安定的な売上につながるでしょう。

 今後はアパレルだけでなく、さまざまな分野で社内インフルエンサー候補を積極的に採用する時代が来ることが予測されます。現時点で採用基準に含まれていないのであれば、自社の戦略と照らし合わせて、見直してみるのもよい機会かもしれません。

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記事執筆者

望月 智之 / 株式会社いつも 取締役副社長
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。
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