エクセル経営からPython活用へ!ワークマンがデータ分析を高度化させるねらいとやり方とは
──Pythonの導入効果について現時点でどのように評価していますか。
土屋 Excelの制限を超える膨大なDBを作成できる「Pandas(パンダス)」や予測のためのアルゴリズム「Scikit-Learn(サイキット・ラーン)」などの活用、PythonでWebから特定の情報を収集できる仕組みを整え、競合のECサイトから商品価格のデータを自動で取得できるようにするなどして、これまで時間がかかっていたタスクの自動化において十分な成果が出ています。
社内で年1回開催されている「データ分析発表会」では、ピッキング作業の予測やパートの人員配置において、CSVファイルをExcelに取り込んで処理するまでに1日かかっていたところを、Pythonでの自動化によって1時間まで大幅に短縮された事例などが発表されました。現在では、外部のコンサルティング会社に協力いただきながらコードをチューニングした結果、処理時間は15分になっています。
現在は、販売総数の少ないロングテール商品の発注を最適化できるかの検証を行っているところです。検証では、最適化に当たってのデータの処理方法や手順をPythonでプログラミングし、他社製の需要予測システムにインポートするかたちをとっています。これまでの検証では有望な結果が出ています。
期限を設けないことがモチベーション維持のカギ
──独自のデータ分析資格制度について詳しく教えてください。
土屋 「データアナリスト(DA)」「データサイエンティスト(DS)」「データ分析エンジニア(DE)」の3つの資格を定め、有志の社員がその取得に取り組んでいます。
DAは新入社員や1~2年目のSV(スーパーバイザー)を主な対象として「販売士2級」の取得を条件に受講でき、社内試験に合格すると認定されます。DA認定者で「統計検定3級」を取得しており、なおかつデータ分析チームに参加している社員が参加できるのがDSです。DAと同様に、社内研修を受けて社内試験に合格すると認定される仕組みです。
DEはDS認定者が外部の短期集中研修と社内の研修で機械学習やPythonのコーディングを学び、「Python3エンジニア認定データ分析試験」に合格すると認定されます。
これまでに全社員の3分の1にあたる約130人が研修を受け、8人がDEに認定されました。「#ワークマン女子」の拡大に伴って、その業務で必要となるデータ分析のスキルを習得しようと、DE取得のための社内研修の受講希望者が一気に増えています。
──それほどまでに、データ分析に取り組むにあたっての社員のモチベーションが高いのはなぜですか。
土屋 Excelに関してもそうですが、ワークマンにおいてはデータ分析業務が「やらされ仕事」ではなく、自身の仕事の効率や成績を向上させるための重要なプロセスやツールになっている、つまりデータ分析が「自分ごと化」されているからだと思います。
また、データ分析やシステム開発を進めるにあたり、会社から期限を設けないことも大きな要因です。期限を設定するとそれが目的化し、質の低下につながりかねません。当社ではExcelを活用し始めた12年前からできるだけ期限を設けないようにしていますが、結果として完成までのスピードは上がっています。
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