小売の店舗やアプリが広告媒体に!リテールメディア、収益化の手法と課題とは

小野 貴之 (ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長)
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Cookie規制も追い風に、広告主も熱視線!

 世界的な「Cookie(クッキー)規制」の流れもリテールメディアの追い風となっている。近年はプライバシー保護の観点から、グーグルやアップル(Apple)などのメガプラットフォーマーが「サードパーティーCookie」の廃止に乗り出している。日本でも22年4月に改正個人情報保護法が施行。Cookieをはじめとした個人関連情報を第三者に提供し、個人情報を紐づける場合は本人の同意が必要となった。

 「Cookie」とは、Webサイトに訪れたユーザーの情報を一時的に保存しておくための仕組みで、Webサイトに残る「足跡」ともいわれる。サードパーティーCookieとは、「ユーザーが訪問しているWebサイトとは、異なるドメインから発行されるCookie」のことを指す。このサードパーティーCookieが規制されると、一度サイトに訪問したユーザーに繰り返し広告を配信する「リターゲティング広告」が制限を受けることになる。

 一般的に、リターゲティング広告はほかの広告と比較して高い効果が得られる(購買につながりやすい)とされ、これが規制されるとなるとメーカーをはじめとした広告主にとっては大きな痛手となる。また、サードパーティーCookieが廃止されると、広告を見た消費者が購買に至るまでの行動も計測不能になる。つまり、広告の効果が検証できなくなるという問題も出てくる。

 そうしたなか、広告主となるメーカーが期待を寄せるのが小売業の持つファーストパーティー・データである。冒頭で述べたとおり、リテールメディアは顧客IDに紐づいた購買データのほか、自社ECやアプリでの検索・トランザクション、店舗にビーコンを設置している場合は店内の人流データなど、小売業が直接収集したファーストパーティー・データを活用して、広告を配信する。これらを活用すれば、購買履歴・行動履歴にもとづいたターゲティングなどコストパフォーマンスに優れた広告・販促策を講じることができる。もちろん、各種施策を高い精度で効果検証することも可能だ。広告主(メーカー)からすれば、小売業が持つファーストパーティー・データはまさに宝の山といっていい。

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